坐位における骨盤前後傾による仙結節靭帯の硬さの違い

書誌事項

タイトル別名
  • 〜エラストモードを用いた組織弾性の変化について〜

説明

<p>【はじめに、目的】</p><p>坐位痛の多くはいわゆる不良姿勢によって誘発されることが多い。その要因の一つに仙結節靭帯(以下STL)が挙げられる。しかし実際に坐位での姿勢変化に伴うSTLの弾性変化に関する報告は狩猟した限り見当たらない。今回の目的は、骨盤中間位(以下中間位)を良姿勢とし、そこから骨盤後傾位(以下後傾位)にしたときのSTLの組織弾性がどのように変化するかを調査した。</p><p>【方法】</p><p>対象は腰痛の既往のない健常人男性6名(平均年齢30歳±5.1)坐位痛を主訴とする男性1名(27歳)を対象とした。STLの組織弾性の計測にはコニカミノルタ社製SONIMAGE HS1の18-4リニアプローブを使用し、エラストモードを用いて計測した。関心領域はSTLの仙骨付着部、中間部、坐骨付着部の3点とした。開始肢位は股関節、膝関節90°の端坐位として、上前腸骨棘と上後腸骨棘間との高さが2横指となるように規定し、これを中間位とした。開始肢位より上前腸骨棘と上後腸骨棘間との高さが平行となるように骨盤後傾を指示し、計測は中間位と後傾位それぞれ3回計測した。得られた数値の平均を組織弾性とした。症例に関しては、同様の方法でSTLのハイドロリリース注射の前後に計測し、変化を観察した。</p><p>【結果】</p><p>健常人におけるSTLの組織弾性は、仙骨側と坐骨側で後傾位よりも中間位で優位に低値となり中間位で硬くなる結果となった。(p<0.05)中間部では有意差は認められなかった。症例に関しては、注射前は後傾位の方が組織弾性が低値となり、中間位よりも硬くなった。しかし注射後は疼痛消失とともに中間位の方が組織弾性は低値となり、後傾位よりも硬くなった。</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>今回の結果からは健常人では坐位での後傾位よりも中間位で優位に硬くなり、特に骨の付着部でより硬くなる傾向を認めた。症例では注射前は後傾位で硬く、注射後には疼痛消失とともに中間位の方が硬くなった。STLは端坐位で重心が仙腸関節の前後傾軸の前方を通過することで生じる仙骨のnutationを制動する作用がある。今回の結果は中間位の方が後傾位よりもnutationが誘発され、さらに、連結する大殿筋の伸張や多裂筋の収縮による影響が関与していると考えられた。我々は臨床経験において、坐位痛を訴える症例のほとんどが骨盤後傾位で認める場合が多い。そのため健常人も後傾位で硬くなると予想したが、異なる結果となった。今回の結果のみでSTLと坐位痛との関与は明確にできなかったが、症例では健常人とは異なる反応を示したことから、癒着や拘縮などSTLの機能破綻が坐位痛と関与している可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究に関して、対象者には研究趣旨を口頭にて十分に説明した後、同意を得て実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-196_2-H2-196_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157475072
  • NII論文ID
    130007693810
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-196_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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