寛骨臼形成不全患者と健常者の股関節外旋運動における大腿骨頭の前後移動量の比較と関連因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】寛骨臼形成不全(以下、AD)を有する患者は、OA発症の危険率が高いことから、適切なアプローチを施しOA発症を予防することが重要である。AD患者では、股関節不安定性による関節軟骨の磨耗や関節唇損傷が生じるとされる。この不安定性を明らかにするためには寛骨臼に対する大腿骨頭の移動量の検討が必要だが、移動量について調べた報告は少ない。本研究の目的は、超音波画像診断装置(以下、エコー)を用い、AD患者の股関節外旋運動に伴う寛骨臼に対する大腿骨頭の前後移動量を健常者と比較し、AD患者の骨頭移動とそれに関連する因子を明らかにすることである。</p><p>【方法】対象は寛骨臼形成不全(CE<20°)を有するAD群17名(38.1±12.4歳)と健常群17名(30±11.2歳)とした。撮影にはエコーを用い、対象者の測定側下腿をベッド端から垂らした股関節伸展0°位で行った。エコーの画面上で大腿骨頸部軸が水平になるまで股関節を回旋させた位置を回旋0°位と定義した。撮影は0°位、0°位から30°外旋させた30°位、最大外旋位で行った。寛骨臼−大腿骨頭間の距離は矢状面における寛骨臼の最外側縁を通る線を0、前方を+、後方を-とし、大腿骨頭の最前縁を通る線との距離を計測した。1°あたりの骨頭移動量と関連する因子の検討として、両群でFaber Distance、AD群ではX線でCE角を計測した。Faber Distanceは疼痛が出現した位置もしくは可動最終域における床と大腿骨外側顆の距離とした。骨頭移動量の比較にはMann-WhitneyのU検定、関連因子の検討にはSpearmanの順位相関係数を使用し、有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】寛骨臼-大腿骨頭間の距離は0°位、30°位、最大外旋位でそれぞれAD群は0.83±0.50mm、1.13±0.61mm、0.66±0.63mm、健常群は-0.70±0.29mm、-0.42±0.32mm、-0.81±0.31mmであった。0°位と30°位では、AD群は健常群と比べて大腿骨頭が前方に位置していた(p<0.01, p=0.04)。0°から30°までの運動ではそれぞれの群で有意な骨頭移動はなかった。30°から最大外旋までの運動では、健常群で骨頭が後方に移動したが(p=0.02)、AD群では骨頭の有意な移動はなく、1°あたりの後方への移動量は健常群と比べて少なかった(p<0.01)。この範囲の移動量に関連があったのはAD群ではFaberDistance(r=0.62, p=0.01)とCE角(r=-0.51, p=0.04)であった。</p><p>【結論(考察も含む)】骨頭位置について、AD群では臼蓋壁の欠損によって健常群と比べ骨頭が前方に位置していると考えられる。骨頭移動について、健常群では股関節外旋運動に伴い前方関節包が伸張することで骨頭の後方移動が起きたと考えられる。一方、ADでは股関節の靭帯や関節包の緩みがあるとされており、この伸張性を確保できないことが骨頭の後方移動を制限したかもしれない。さらにAD群の骨頭の後方移動量には痛みや可動域制限が関係し、さらに被覆量減少があるほど強く影響する可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院の倫理委員会の承認を得て実施された。またヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則に配慮し、対象者に口頭で説明し同意を得た。 </p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-58_1-H2-58_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157490176
  • NII論文ID
    130007693989
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-58_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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