廃用性筋萎縮と再荷重の過程におけるマトリックスメタロプロテアーゼとマイオカインの変動

DOI
  • 相原 正博
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学分野
  • 斉藤 史明
    帝京大学神経内科
  • 丸山 仁司
    国際医療福祉大学大学院保健医療学理学療法学分野
  • 萩原 宏毅
    帝京科学大学医療科学部理学療法学科 帝京大学神経内科 帝京科学大学大学院理工学研究科バイオサイエンス専攻医療科学分野

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>廃用性筋萎縮は筋の不活動により生じ,高齢者においては寝たきりやADLの低下を引き起こす要因の一つである。筋萎縮に対する理学療法はこれまでにも多く検討がなされているが、筋萎縮に対する負荷量や筋萎縮の病態、効果判定に有用な指標は明らかとなっていない。我々はこれまで、骨格筋から分泌され、種々の作用機序が報告されるマイオカインに着目し、筋萎縮や再荷重の過程においてこれらが変動することを明らにしてきた。しかし、廃用性筋萎縮におけるマイオカインの作用機序は未だに不明である。最近、骨格筋を構成する基底膜やコラーゲンの分解に関与するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)が注目されている。これらの MMPsは、筋ジストロフィーなど筋疾患の骨格筋の変性と再生の過程に関与することが報告されている。今回、廃用性筋萎縮と再荷重の過程におけるMMPsとマイオカインの関連の可能性について検討した。</p><p>【方法】</p><p>9週齢のマウス(C57BL6)を使用し、コントロール群(Co群)、ギプス固定群(CI群)、再荷重1日群(RL1群)、再荷重14日群(RL14群)に分けた。筋萎縮誘発方法は、膝関節伸展、足関節底屈位にてギプス固定を実施し、2週間の固定期間を設けた。飼育中にギプス固定による浮腫や緩みが生じた際には、その都度巻き直しを行った。2週間の固定期間後、ギプス包帯を除去し、再荷重を 1日間、14日間行った。前脛骨筋、腓腹筋、ヒラメ筋を単離した後、筋湿重量計測を実施し、凍結横断切片を作成した。HE染色、免疫染色にて組織学的解析を実施した。マルチプレックスサスペンションアレイ解析にて、MMPs及びマイオカイン(IL-6,IL-15)の血中濃度を測定した。また、マイクロアレイ法にて、骨格筋中のMMPs及びマイオカインの遺伝子発現量を網羅的に検討した。</p><p>【結果】</p><p>筋湿重量はCo群と比較して、CI群とRL1群で有意に減少した。RL1群では筋萎縮の改善は認められなかったが、RL14群の腓腹筋、ヒラメ筋で有意に増加した。マルチプレックスサスペンションアレイ解析では、IL-6、IL-15は Co群、RL1群、CI群の順に高値を示した。マイクロアレイ解析では、IL-6は Co群と比較して、CI群で遺伝子発現量が増加し、IL-15は RL1群では遺伝子発現量が減少した。MMPsについては、MMP-2 , 13, 14は、Co群と比較して CI群、RL1群で、MMP-9はRL1群、RL14群で発現量が増加した。MMP-3は実験期間を通して遺伝子発現量が増加した。MMP-13の増加は 40から60倍と、検討した MMPsの中で最大の変動を示した。</p><p>【結論】</p><p>廃用性筋萎縮モデルマウスの病態において、MMP-2、3、9、13、14などが関与することが示唆された。このことから、廃用性筋萎縮から再荷重の過程において、MMPsが重要な役割を果たしている可能性が考えられた。また、マイオカインとMMPsが連動して変動することが示唆された。今後、個別のMMPとマイオカインとの関連について、更に詳細な検討を進めていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本実験は実験動物(マウス)を用いた研究である。研究を実施するにあたり,帝京科学大学動物委員会と国際医療福祉大学大学院の承認を得て実験を行った。また動物の扱いに際しては,動物実験のガイドラインに則して研究を実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-148_2-I-148_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157508224
  • NII論文ID
    130007694143
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-148_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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