歩行時の足圧中心軌跡における左右差の検討

DOI
  • 飯田 開
    文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科
  • 江戸 優裕
    文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科

書誌事項

タイトル別名
  • -足部機能との関連性-

説明

<p>【はじめに、目的】 健常成人の歩行時の足圧中心(以下、COP)軌跡は、多様性が認められ一定した見解が得られていない。歩行時の床反力作用点であるCOP軌跡は、唯一床面と接している足部の支持・推進機能に影響を受けることが推察される。また、先行研究で片側のみの検討が多く、両側を対象として左右の違いを検討したものは少ない。</p><p>そのため本研究では歩行時のCOP軌跡の左右差を明らかにし、さらにCOP位置と足部機能との関係性を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】 対象は健常成人17名(男11名・女性6名;平均年齢20.3±1.4歳)とし、歩行計測と理学所見の評価を行った。</p><p> 歩行は、歩行解析用フォースプレートWin-FDM(Zebris社)を用いて至適速度の裸足歩行を計測し、左右9足分のデータを得た。得られた足圧分布図から、後・中・前足部におけるCOP通過位置(以下、%COP:外側を通過するほど(+)]を画像処理ソフトImage J(米国国立衛生研究所)を用いて計測した。なお、%COPは足角の影響を受けることに配慮し、本岡ら(2005)の方法を一部改変して計測した。</p><p> 理学所見は、1度単位で測定可能な角度計(シンワ社)を用いて、下腿踵骨角(以下、LHA)・距骨下関節(以下、ST関節)回内および回外可動域を左右3回ずつ計測した。</p><p> 全ての分析には平均値を用い、正規性の確認後に、%COPの左右差を対応のあるt検定、%COPとその他の歩行パラメータおよび理学所見の関係をPearsonの相関係数を用いて検討した(有意水準5%)。</p><p>【結果】 後足部%COPは右51.2±2.2/左52.5±2.2(p<0.01)、中足部%COPは右51.5±2.8/左52.6±3.0(p=0.06)、前足部%COPは右42.3±1.7/左43.9±2.2(p<0.01)であった。</p><p> 相関分析の結果から、右は前足部%COPとST関節回内ROM(r=0.54)に有意な相関を認めた。左は前足部%COPとST関節回外ROM(r=0.43)および対側歩幅(r=-0.48)、中足部%COPと対側歩幅(r=-0.42)に有意な相関を認めた。</p><p>【考察】 本研究の結果から、歩行時に右足のCOPは左足よりも足底内側を通過することが分かった。また、相関分析の結果より、歩行時のCOP位置と歩幅・ST関節ROMには関連を認めるものの、その性質は左右で異なることが示唆され、特に前足部%COPに関しては、右はST関節回内ROM、左はST関節回外ROMとの間に正の相関を認めた。</p><p> 右においては、前足部でCOPが第1趾方向に向かわないことで下腿三頭筋による駆動力が発揮しにくくST関節回内ROMが増加したのに対し、左は下腿三頭筋による駆動力を発揮できるためST関節には回外作用が働き回外ROMが増加したと考えられる。</p><p>【結論】 本研究では、歩行時のCOP軌跡において後足部・前足部レベルでの左右差が生じ、ST関節との左右異なった関連性がある可能性が示唆された。そのため前足部COP位置をコントロールするためにはST関節への左右異なった介入が有効となる可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の目的と方法を口頭ならびに書面にて十分に説明を行い、署名にて同意を得た。また本研究は文京学院大学の倫理委員会にて承認を受けてから行った。(承認番号2018-0010)</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-77_1-I-77_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157521792
  • NII論文ID
    130007694306
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-77_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ