呼吸障害を持つこどもの理学療法

DOI
  • 稲員 惠美
    静岡県立こども病院 リハビリテーション室

書誌事項

タイトル別名
  • ─アセスメントと実際─

抄録

<p> 当院における「早期リハビリテーション」に対するfirst contactは77%が「呼吸理学療法」(以下RPT)であり,小児疾患の急性期への介入では必須である。小児呼吸器系の解剖学的,生理学的特徴を踏まえ,リスク管理を行いながら臨床に臨む必要がある。</p><p> しかし小児呼吸障害を扱う上で最も難渋するのはRPTのための「アセスメント」とそれを基に安全で効果的な「実践」である。</p><p> 小児呼吸障害は成長発達期にあるため,急性期介入では狭義のRPTだけでなく早期離床は未頚定や未座位などの小児の特殊性からくる機能障害を考慮し在宅維持期の課題につなげることが求められる。さらに在宅期では感染予防などのRPTとして機能改善や発達援助の視点で想定される呼吸障害を見据えながら日常の援助を行うことが望まれる。</p><p> セミナーでは小児呼吸障害の特徴的な症状として①上気道の問題:狭窄と喉頭貯留,②下気道:気管(支)軟化症,末梢気管支の肥厚・攣縮及び分泌物貯留,③肺容量:胸郭と肺の拡張能と弾性収縮力,④拡散能:肺血流(流量と速度),肺水腫(肺胞性と間質性),⑤ポンプ機能(呼吸中枢や筋力)を胸部レントゲン所見,血ガス値,換気量,EtCO2,呼吸パターンと聴診音などを手掛かりに呼吸障害の病態を整理し,臨床推論をたどりながら症例を提示したい。</p><p>【症例1】1歳4か月男児。診断名RSVによる細気管支炎。PT開始時血ガスpH7.409,pO2 69.7 mmHg,pCO2 54.5 mmHg,HCO3 33.7 mmol/L,BE 7.2 mmol/L,Lactate 7.5 mg/dl。理学所見は挿管鎮静中で;体温37.1℃,HR120 bpm,RR25~30,SpO2 93-96%.聴診所見:両背側脊柱付近は気管支呼吸音,全体の呼吸音は浅く,特に下側になると減弱し水泡音(粗い断続音),いびき音(低音性連続音),呼吸様式は軽度陥没呼吸。胸部XP所見は右房,両横隔膜内側,大動脈弓のシルエットアウトと下肺野の透過性亢進を認めた。吸引でSpO2が低下すると回復に10分以上を要するような気道過敏性は残存するものの,右側臥位で酸素化が低下しなくなったためPT開始となった。PTがベッドサイドに到着すると仰臥位20度ギャッジアップで管理中でバイタルは安定していた。</p><p>【症例2】重症心身障害児,GMFCSⅤ,9歳の男児。診断名:気管支炎・副鼻腔炎。発熱と喘鳴増強により一般病棟に入室し当日よりPT処方あり。胸部XP所見は肺門部陰影の増強と右上葉に無気肺を認めた。PT開始時血ガス(静脈)pH7.382, pCO2 53.4 mmHg,HCO3 31.7 mmol/L,酸素鼻カヌラ2 LでSpO2は右側臥位:96%,左側臥位:80%以下となり酸素マスク8 Lでも88~91%であった。聴診所見は喉頭貯留音が強いが吸引直後は上気道の狭窄音は認めず,両側ともに肺胞呼吸音(-),左は低音性連続性ラ音と低音性断続性ラ音が混在した。右肺は副雑音も微弱で吸気最終に短い高音性連続性ラ音と低音性断続性ラ音を聴取した。排痰後に両側の肺胞呼吸音が改善してもSpO2の体位依存性は持続した。</p><p> 2症例の初回介入時にベッドサイドで医師,看護師とどのような情報交換を行い,どのようなアセスメントのもと何から開始したのかについて,またその経過について解説を加えたい。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-25-J-25, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157526656
  • NII論文ID
    130007694356
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-25
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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