地域在住男性高齢者のフレイル要因と身体各部位筋量との関連
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p>高齢者のフレイルの臨床的な初期徴候は筋力低下である。この筋力低下は全身の骨格筋量減少との関連が深く,フレイルの判定には全身の骨格筋量の測定が重要と考えられる。地域在住高齢者の加齢による筋委縮は下肢筋で著しい。次いで腹部筋,上腕筋の順に筋萎縮が起こる。さらに,加齢に伴う筋肉量減少の割合は女性より男性に大きいと報告されている。男性の筋肉量は中年期以降で急速に減少し,70歳以上になると半数近くがサルコペニアと判定されるとの報告もある。</p><p>そこで本研究では地域在住男性高齢者(男性高齢者)を対象として,フレイルに影響を及ぼす要因および身体各部位の筋量減少を明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>65歳以上の男性高齢者35名(平均年齢±標準偏差:70.9±3.7歳)を対象とした。フレイルの評価には厚生労働省が示している基本チェックリストを用いた。この基本チェックリストを使用し,3点未満を健常群,4点以上のプレフレイルとフレイルをフレイル群に分類した。超音波Bモード装置を用いて,全身8ヶ所の筋厚(上腕前・後部,大腿前・後部,下腿前・後部,腹部,肩甲骨下部)を測定した。その他,年齢,Body Mass Index (BMI),握力および5m通常歩行速度を測定した。</p><p>統計解析は対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定を使用し,健常群とフレイル群の基本チェックリストの下位項目,身体各部位筋量および各測定項目を比較検討した。次に,Spearmanの順位相関係数を用い,基本チェックリスト総合点と身体各部位の筋量および各測定項目との関係を検討した。</p><p>【結果】</p><p>基本チェックリスト総合点の平均は3.5±3.3点であった。基本チェックリストの下位項目ではフレイル群が健常群と比べ,身体機能,口腔機能,認知機能および抑うつ気分において有意に低い値を示した。基本チェックリストの総合点は,上腕前部の筋量に有意な負の相関を認めた。</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果から,男性高齢者のフレイル要因と身体各部位の筋量減少には部位差が存在することが示された。男性高齢者のフレイル要因の増加は,下肢筋量の減少よりも上腕前部の筋量の減少がより関係した。今後は,フレイル高齢者の筋量減少を早期に発見できるよう上腕部前部の筋量の評価方法を検討する必要がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>すべての対象者には,事前に研究の趣旨と目的を十分に説明し,書面により研究参加への同意を得た。研究の参加は自由意志であること,調査に協力しないことや途中で中止した場合であっても対象者には不利益を生じることがないこと,測定後においても同意を撤回できることを説明した。 </p><p>倫理的配慮は,九州大学大学院芸術工学研究院の実験倫理委員会の承認を受けて(承認番号:234)実施した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), C-102_1-C-102_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157758336
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- NII論文ID
- 130007692613
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可