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説明
<p>【はじめに】</p><p>近年,様々な原因により学業に支障をきたし休学や退学に至る学生が多い。文部科学省より大学の退学率や入学時からの資格取得率などの情報公開が義務化される方針もあり,社会的に注目をあびている。理学療法士養成校においても留年や退学に至る学生が多いと言われながらも,その状況把握と対策が全国的に調査されている研究は少ない現状にある。そこで本研究では,全国の理学療法士養成校において,平成29 年度で長期間にわたり学業に支障をきたした学生の実態について調査し,現状の把握とその対策を構築することを目的として調査を行った。</p><p>【方法】</p><p>対象は全国の理学療法士養成校259 校とし,書面にて研究説明を行った上,同意の得られた養成校にWeb アンケートを用いて調査を実施した。調査期間は平成30 年6 月22 日~7 月31 日までとした。</p><p>アンケート内容は,①養成校に関する事項(養成校の形態,学生数,教員数,保健室ならびに学生相談室の有無,普段の学生対応体制),②学業に支障をきたした学生に関する事項(学業に支障をきたした原因,発現学年,発現時期,現在の状況,対象学生の入学前状況)の項目に大別し調査を実施した。</p><p>【倫理】</p><p>養成校情報,個人情報の管理に関しては,特定されることのないよう十分に配慮した旨を説明し,研究の参加に関しては,同意は自由意思とし回答をもって同意したとみなした。本研究は,仙台青葉学院短期大学の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:2917)。</p><p>【結果】</p><p>アンケート結果は,①養成校に関する事項に関しては回答校の内,大学32%, 短大7.5%,4 年制専門学校18.9%,3 年制専門学校41.5% であった。回答が得られた養成校の対象学生数は8630 名であり,各養成校における教員数は専門教員が平均9.5 名,非常勤教員が平均21.5 名であった。保健室に関しては,保健室が「ある」と答えた校は86.8% であった。学生相談室に関して,「ある」と答えた校は81.1% であった。普段の学生対応体制は,担任制63.5%,担当制+ゼミ制28.9%,ゼミ制3.9%,その他3.9% であった。</p><p>②学業に支障をきたした学生に関する事項では,回答を得られた学生が79 名であり,現在の状況として,対象学生の40% が退学,19% が休学,18% が留年に至っていた。その原因は精神疾患が32% と最も多く,次いで進路変更の迷いが22% であった。その事象の発現がみられた学年は3 年制2 年次が28% と最も多かった。次いで,3 年制3 年次,4 年制2 年次,4 年制3 年次の割合が高かった。事象の発現時期に関しては4 ~ 5 月,6 ~ 7 月が多かった。対象学生のうち入学以前より社会的間題やトラウマ的間題を経験した学生が33% おり,その内容は家庭間題が44% と最も多かった。</p><p>【考察】</p><p>学業に支障をきたす学生は中間学年が多いことから,学習環境や生活環境の変化,また講義や実習を通じて理学療法士像を学ぶなかで様々な精神的な負担や職業への不安を生じ,退学率等へと繋がっているものと考える。またそのうち約3 割の学生は入学前から何らかの間題を抱えている可能性がある。早期の段階から学生の能力や適性を把握する必要があると考えられ,担任制による体制をとっている養成校が多いが,入学時当初から他教員の参加や保健室,学生相談など連携的な支援が必要と考える。</p><p>【結論】</p><p>本調査により,学業に支障をきたした学生について,2 ~ 3 年次に精神疾患や進路変更を生じ,退学に至るケースが多いことが分かった。早期からの多角的な心理的なサポートを行える環境や関わりが必要であることが示唆された。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), D-53-D-53, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157773312
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- NII論文ID
- 130007692845
- 120007044320
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- ISSN
- 18848753
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- departmental bulletin paper
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可