要支援高齢者の日常身体活動量と身体組成
抄録
<p>【はじめに・目的】日本は高齢化社会を迎え,健常な自立高齢者から介護認定を受ける高齢者も増加し続けており,その要因の一つに身体活動量の低下が示唆されている.身体活動量(エネルギー消費量)は推定エネルギー必要量の算出にも用いられ,健康維持・増進の指標とされている.しかし,これらのデータは比較的健康な者を対象に策定されたものがほとんどであり,介護認定者を対象にしたデータはほとんどない.本研究は介護認定者における身体活動量と身体組成の現状を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】地域在住の70歳以上の高齢者で,介護認定を受けているデイサービス利用者を対象とし,歩行や立位保持などの移動動作が自立している(修正自立も含む)要支援認定者15名(男性5名,女性10名,平均年齢84±6歳:70~97歳 )を抽出した.日常生活下のエネルギー消費量の測定には二重標識水法を用い,その算出した値から基礎代謝量(国立栄養研究所の推定式使用)を除して身体活動レベル(PAL)を求めた.歩数や活動強度は,三軸加速度計(松下電工製,アクティマーカー)を2週間装着し,1日の歩数と不活動(1.1METs未満),座位行動(1.1~1.5METs未満),低強度(1.5~3.0METs未満)そして中強度以上(3METs以上)の活動時間を評価した.身体組成は,二重標識水を体重に対して一定量摂取し,体水分に均一に分布された後,その濃度から希釈容積を求めることによって測定した.また,身長,体重から算出したBody Mass Index(以下、BMI)と比較した.</p><p>【結果】エネルギー消費量(TEE)と身体活動レベル(PAL)は,全体でTEE:1,390~2,319kcal(1,702±234);PAL:1.61±0.15,男性で1,729~2,319kcal(1,883±249);PAL:1.55±0.10,女性でTEE:1,390~1,913kcal(1,612±174);PAL:1.63±0.17であった.歩数・中強度活動時間においては,男性は1,937±698歩・6±4分/日,女性2,633±1,417歩・12±9分/日であった.身体組成の分析による体脂肪率の判定は,12/15人(80%)が肥満であった.その体脂肪率とBMIには相関があった.しかし,BMIは正常値であっても,体脂肪率が高い肥満者が5/15人(33%)存在していた.</p><p>【結論】要支援者のTEEは,日本人の健常な高齢者を対象とした値と比較して,男性においては低い傾向を示し,女性においては有意に低値を示した.PALは,厚生労働省が定める基準に対し,男女ともにレベルⅠ(1.45:低い)に相当した.青柳らの報告による良好な健康状態に関連する身体活動閾値(歩数・中強度活動時間)は,8,000歩・20分/日以上とされているが,本研究の対象者は著しく低値を示した.要支援者のTEEが低い要因の一つに、身体活動量が低値であることが示唆された.身体組成は,BMIが正常値であっても,体脂肪が蓄積している隠れ肥満が30%以上存在していた.要支援者は,加齢に伴うサルコペニアと肥満が合併するようなサルコペニア肥満の潜在的な危険性が示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は福岡大学研究倫理審査委員会における承認(整理番号16-12-01)を受けるとともに,すべての対象者には本実験の開始前に実験に伴う危険性と利益に関する詳細な説明を行い,同意を得た.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), G-60_2-G-60_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157826432
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- NII論文ID
- 130007693465
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可