腰部脊柱管狭窄症の間欠性跛行が改善した一例
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- 末次 康平
- 医療法人りゅう整形外科
Description
<p>【はじめに】</p><p> 高齢者の増加に伴い、腰部脊柱管狭窄症(Lumbar spinal canal stenosis以後LCS)患者数も増加している。LCSにおける間欠性跛行は歩行能力を低下させ、高齢者の日常生活活動動作を制限し、身体的、精神的に悪影響を及ぼす。以前より多数のLCSに対する報告はされており、治療法の一つとして運動療法が推奨され、Karenらのレビューによると患者教育、徒手療法、運動療法、有酸素運動が有効であると述べられている。しかし他の論文では徒手療法の有効性には疑問が投げかけられている。この度、間欠性跛行を呈したLCS患者を担当させて頂き、患者教育とセルフエクササイズにおける運動療法、有酸素運動を主体とした理学療法において良好な結果を得たので報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p> 本症例は70歳男性、数年前より長時間の立位にて腰痛を自覚。特に炊事の際に腰痛が出現し、途中で休憩をはさむ状態であった。また以前は1km程歩くと左大腿前面につっぱり感と痺れが生じていたが、その後徐々に歩行距離が短くなり、日常生活に支障が生じたため当院を受診。画像所見より左腰椎椎間孔2/3(以後左L2/3)間の狭窄が認められLCSの診断となった。静脈注射としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液製剤、サリチル酸ナトリウム、アルプロスタジル、物理療法として腰椎牽引が開始となった。初診後5週目より理学療法開始となった。</p><p>【評価とリーズニング】</p><p> 本症例の主訴は立位時の腰痛と日課であるウォーキング時の間欠性跛行であった。理学療法初期評価として安静時の神経学的所見にて膝蓋腱反射は左右ともに正常。表在覚も左右ともに正常。筋力はMMTにて膝関節伸展が右5左4レベルであった。自動運動検査にて伸展時に左腰部に疼痛が生じ、ケンプテストにて左大腿前面につっぱり感が生じた。歩行試験のスクリーニングとしてウォーキング時に左大腿部つっぱり感が出現したおおよその距離を500m毎に分類し記録してもらった。初回介入時の連続歩行距離は500m未満であった。試験的治療として左L2/3間の離開を行うと腰椎の伸展時痛が消失し、ケンプテストも陰性となったため、本症例における責任病巣が左第2腰椎神経根(以後左L2神経根)であると推察し治療プログラムを考察した。</p><p>【介入と結果】</p><p> 本症例への介入として週に1回、主に患者教育(LCSの病態、日常生活での留意点、痛みの知識等)とセルフエクササイズの指導を行った。本症例は元来スポーツジムに週3回程度通い、毎日ウォーキングを行うなど積極的に運動を行っており、セルフエクササイズに対する理解も高かった。理学療法初回介入時には右側臥位にて行う左L2/3間離開のセルフストレッチを指導し、ジムにおいて下肢の筋力増強運動の指導を行った。当院受診から6週目に2回目の介入を行い、症例の連続歩行距離は500m以上1km未満であった。腰痛が軽減し、椎間孔の拡大が有効であることが確認できていた為、股関節の屈曲ストレッチと背臥位にて両膝を抱きかかえるように股関節から腰部のストレッチを指導した。7週目には著名な改善が認められなかった。また胸椎の伸展運動をセルフエクササイズとして指導した。8週目には長時間立位時の腰痛も消失し、炊事も休憩なしに行え、連続歩行距離も2km以上2.5未満以下に延長した。その後セルフエクササイズを継続してもらいながら最終評価時には主訴となる左大腿部のつっぱり感と痺れもほぼ消失し膝関節伸展のMMTも左右ともに5レベル、連続歩行距離も3km以上となった。</p><p>【結論】</p><p> 菊池らによるとLCSによる神経障がいは、神経根性、馬尾性、混合性に分類され、その神経障がい型式によって保存療法の有効度は異なり、神経根性の症例に対しての保存療法は有効であるとの報告がされている。本症例の自覚症状や理学療法評価から左L2神経根型のLCSと推察され、患者教育、セルフエクササイズの指導を行った。林らは股関節ならびに腰椎の可動域の改善が有効としており、今回これらの治療に加え胸椎の伸展運動も追加した。結果として腰痛は消失し、連続歩行距離も延長されたことからも適切な理学療法が提供できたのではないかと考える。課題として腰椎可動域の客観的な指標がないこと、間欠性跛行の歩行距離が自己申告制でこちらも客観的指標に乏しく信頼性に足るものではなかった。今後、外来リハビリテーションにおいて時間的制約がある中での簡便かつ信頼性の高い評価を行っていくことが課題であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本症例にはヘルシンキ宣言に則った十分な説明を行い、同意を得た。</p>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 46S1 (0), H2-166_1-H2-166_1, 2019
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157848192
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- NII Article ID
- 130007693698
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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