腰椎椎体圧迫骨折後の長時間座位が、動的不安定性に至った要因として考えられた一例
説明
<p>【症例紹介】</p><p>88歳女性。X年3月終わり、長時間座位後に腰痛出現。4月初旬に腰痛増悪し、MRI診断にて、第2腰椎椎体圧迫骨折後偽関節、骨粗鬆症と診断され、当院保存的加療目的にて入院となった。受傷前のADLは、痛みはあるもT-cane使用にて500m屋外歩行自立しADL動作は可能であった。入院時より腰椎軟性コルセット装着にて、理学療法開始となった。</p><p>【評価とリーズニング】</p><p>入院時評価:NRS:8/10、神経学的理学所見なし、MMT(右/左):大腿四頭筋3+/3+ 腸腰筋2/2、片脚立位(右/左)不可/1~2秒、車輪型歩行器使用で20m程連続歩行可能、FIM 108点。L2椎体高比(椎体前縁部/椎体後縁部)座位0.45・臥位0.67、局所後弯角(L1上縁とL3下縁を結ぶ線の角度)座位:21° 立位:14°で椎体不安定性を認めた。車輪型歩行器使用で20m程連続歩行可能、FIM 108点であった。寝たきり、臥位になることを嫌がられ、日中は座位にて過ごされる時間が長く、積極的に病棟歩行練習を行った。主治医より、腰痛は陳旧性ではあるがL2椎体骨折部由来と考え対応していくとの方針で、①廃用症候群の予防、②骨折部へのストレスを最小限に留める為の運動療法・ADL動作指導、③二次的な脊柱後弯変形の予防を目的として早期リハビリテーションを開始した。</p><p>【介入内容および結果】</p><p>1日2回、腰痛に応じて立位・座位にて#脊柱起立筋群等尺性ex、#大腿四頭筋・腸腰筋ex、#姿勢矯正(体幹過伸展は禁止)、#片脚立位練習、#病棟内歩行練習を運動療法として開始し、#ADL・基本動作指導も病棟にて施行した。入院後3週経過時、NRS:6、L2椎体高比座位0.16・臥位0.50、局所後弯角座位:25° 臥位:15°にて圧潰の進行および不安定性の増大を認めた。L2椎体再骨折と診断され、経皮的椎体形成術(以下BKP)の適応ではあるが、年齢なども考慮し今後も保存的加療継続との方針となり、骨粗鬆症に対してテリパラチド注射開始となった。胸腰椎半硬性コルセット装着に変更の上、リハビリテーションプログラムは同様に施行した。最終評価(入院後8週経過)時、NRS:2~3、MMT(右/左):大腿四頭筋4/4 腸腰筋3+/3+、片脚立位(右/左)7秒/9秒、椎体高比座位0.15・臥位0.38、局所後弯角 座位:34° 臥位:25°と増大し不安定性も残存した。一方でADL上はシルバーカーにて院内歩行自立、T-cane使用で50m連続歩行可能となりFIM 114点と改善し生活動作レベルは向上がみられていたが、長距離歩行時では腰痛の出現が残存していた。</p><p>【結論】</p><p>高齢者の脊椎圧迫骨折に対する理学療法の効果として、疼痛軽減・バランス能力の向上・背筋筋力の増強・歩行速度の向上などが報告され、本症例でも両下肢筋力・片脚立位バランス・ADL・歩行能力の向上が認められ、腰痛も経時的に軽減した。その一方で骨折部の局所後弯角は増大、骨折部の動的不安定性も残存し、長距離歩行時での腰痛が残存した一因となった可能性がある。本症例は活動性が高く、ベッド上での安静臥位を好まれず、長時間座位をとられ、座位からの立ち上がり動作を繰り返された。結果的に、座位時間は減らした方が良いと思われるが、ADL維持のためには座位の時間を減らすよりも、実際の座位姿勢に対して①背もたれ・肘置きなどのある座椅子 ②起立・着座時の椅子の高さ・手すりなどの環境設定③セラピスト・看護師介助でのベッド上側臥位への誘導などを行い、骨折部への負担を軽減させた上で必要なADL維持、リハビリテーションを継続すべきと考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言を遵守し、対象者には十分説明を行い、口頭と書式において同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-255_2-H2-255_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157858176
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- NII論文ID
- 130007693825
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可