歩行立脚期における舟状骨高の低下量に影響する足部運動の検討

  • 岡村 和典
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科 県立広島大学大学院総合学術研究科
  • 金井 秀作
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科
  • 江川 晃平
    県立広島大学大学院総合学術研究科 医療法人和会沖井クリニック
  • 沖 貞明
    県立広島大学保健福祉学部理学療法学科

説明

<p>【はじめに、目的】</p><p> 静止立位における舟状骨高の測定は,静的な後足部回内アライメントの評価方法として多用されている.近年,動的な足部アライメントの評価方法として,歩行等の動的場面で舟状骨高を測定する方法が注目されている.この方法は立脚期中の舟状骨高の低下量(初期接地時の舟状骨高-立脚期中の舟状骨高の最小値)を測定対象としているが,歩行中に舟状骨高が最小値を示すのは立脚後期であり,静止立位において舟状骨高の測定を行う肢位とは関節角度,荷重位置ともに異なる.さらに立脚後期に後足部は回外方向へ運動していることも考慮すると,歩行立脚期における舟状骨高の低下量が静止立位と同様に後足部回内の程度を反映しているかは疑問である.本研究では,歩行立脚期における舟状骨高の低下量に影響する足部運動を明らかにし,測定結果を解釈する上での基礎的な知見を得ることを目的とした.</p><p> なお,本研究の一部は山口県理学療法士会学術研究助成制度の助成を受けて実施したものである.</p><p>【方法】</p><p> 対象は健常成人42名(年齢20.5±1.9歳,身長166.2±9.6cm,体重58.0±9.0kg,Navicular Drop test 8.4±3.9cm)とした.</p><p> 本研究では,快適速度での歩行中の足部運動と舟状骨高を三次元動作解析装置VICONによって測定した.足部はOxford Foot Modelによって4セグメントにモデル化し,舟状骨高は足底面から舟状骨粗面マーカーまでの垂直距離と定義した.舟状骨高の低下量に影響する足部運動を決定するために,Stepwise法による重回帰分析を行った.この際,初期接地時における後足部に対する前足部の背屈・回外・内転角度と,舟状骨高が最小値に達したタイミングでのそれぞれの角度との差分を独立変数に用いた.統計学的分析にはSPSS 20.0 for Windowsを使用し,有意水準はp<0.05とした.</p><p>【結果】</p><p> 舟状骨高の低下量に影響する足部運動として,後足部に対する前足部の背屈(標準偏回帰係数=0.49,p<0.001)と回外(標準偏回帰係数=0.38,p<0.01)が選択された(調整済み決定係数R2= 0.42, p<0.001).なお初期接地時の角度を基準にした場合,舟状骨高が最小値に達するタイミングでは,39/42名の対象の前足部が後足部に対して回内方向へ運動していた.</p><p>【考察】</p><p> 立脚後期における後足部に対する前足部の回内は,言い換えれば前足部に対する後足部の回外である.そのため歩行立脚期では,この舟状骨高を拳上する方向への運動の程度が,前足部の背屈とともに舟状骨高の低下量を決定する足部運動の一つであることが示唆された.</p><p>【結論】</p><p> 歩行立脚期における舟状骨高の低下量は後足部に対する前足部背屈運動の「大きさ」と,前足部に対する後足部回外運動の「小ささ」に影響されている.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は県立広島大学倫理委員会の承認を受けており,対象には事前に口頭および書面にて本研究について十分な説明を行い,同意を得た上で実験を開始した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-101_1-I-101_1, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157883392
  • NII論文ID
    130007694082
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-101_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ