廃用性萎縮に対する漸増荷重がラットヒラメ筋に与える影響

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  • ~長軸部位での検討~

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 1日の大半をベッドで過ごす入院患者に対して廃用性筋萎縮を最小限に留めるための介入方法を検討することは理学療法の重要課題であるが、実際の臨床の場面ではある程度萎縮が進行した状態から介入することが多く、萎縮筋に対し過負荷な物理的ストレスを与えると筋萎縮を増悪させる報告もある。また、骨格筋の部位によって荷重刺激に対する反応が異なり、特に近位部は廃用性筋萎縮の影響を受けやすく、近位部に対する介入方法を検討することが必要と提言されている。</p><p> 本研究では、漸増荷重による廃用性筋萎縮の回復に及ぼす影響を長軸部位にて経時的に検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p> 8週齢のWistar系雄ラットの左ヒラメ筋を対象筋とした。ラットを無作為に無処置のまま飼育する群(C)と後肢懸垂処置を実施する群(H)、7日間の後肢懸垂処置後に漸増荷重を行う群(G)、同様に一定荷重を行う群(W)に分けた。さらに、実験期間で後肢懸垂処置を8日・11日・14日となるようにH群を分け、荷重介入を1日・4日・7日となるようにG群とW群を分けた。荷重は1日1回日中に行い、負荷量はW群では荷重開始1日目から60分とし、G群では1日目に15分、2日目に30分、3日目は45分、4日目以降は60分とした。</p><p> 実験終了後、ヒラメ筋を摘出し、急速凍結した。後日近位部・中央部・遠位部の試料をそれぞれ作成し、HE染色と光学顕微鏡で検鏡を行った。検討項目は筋線維横断面積、壊死線維・中心核線維の発生頻度とした。統計学的処理は、筋線維横断面積では各群間での分散分析を適用し、壊死線維・中心核線維比率ではΧ2検定を適用した。</p><p>【結果】</p><p> 筋線維横断面積はG群と比較してW群で有意に大きかった。部位別ではH群・W群は近位部に有意な減少がみられたが、G群は部位による相違はみられなかった。</p><p> 壊死線維比率は荷重1日目と4日目におけるG群の近位部は他の部位との有意な増加がみられた。中心核線維比率は荷重4日目におけるG群の近位部で他の部位との有意な増加がみられた。</p><p>【考察】</p><p> 筋線維横断面積においてH群・W群では近位部に有意な減少がみられたが、G群では部位による相違がみられなかった。壊死線維比率においては、G群の近位部にて他の部位との有意な増加がみられたが、同時に中心核線維比率の有意な増加もみられた。Groundらは筋損傷48時間後に壊死筋線維内に浸潤する単核細胞が最も多くなることを報告している。これらのことから、漸増荷重が最も廃用性萎縮の影響を受けやすい近位部に対し効果的な方法であることが示唆された。また、W群と比較してG群の筋線維横断面積では有意な減少がみられた。本研究では漸増荷重群と一定荷重群において総荷重時間が異なり、これが原因として考えられ、今後漸増荷重に加え、総荷重時間を考慮した検討も必要である。</p><p>【結論】</p><p> 漸増荷重が最も廃用性萎縮の影響を受けやすい近位部に対し効果的な方法であることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>金沢大学動物実験委員会の承認を得た(承認番号:AP-153634)。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-113_2-I-113_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157890688
  • NII論文ID
    130007694106
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-113_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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