サルコペニアは消化器外科術後の体成分,身体機能変化に影響するか

DOI
  • 田中 健太郎
    社会医療法人近森会近森病院リハビリテーション部理学療法科

抄録

<p>【背景・目的】 </p><p> サルコぺニアは筋肉量の減少であり術後の生命予後とも関連が強い.今回,サルコペニアが消化器外科術後早期の体成分,身体機能変化に影響するか検証した.</p><p> </p><p>【方法または症例】</p><p> 対象は2017年に当院にて待機的消化器外科開腹手術を受け,術前に調査へ同意が得られた40例の担癌患者である.まず術前の握力および10m歩行速度を測定し,体成分を分析装置(InBodyS10®)を用いて分析した.これをAWGSの提唱したサルコペニアアルゴリズムに準じて有無の2群に分類した.次に手術侵襲の強さが均一化していることを手術時間と体重あたりの出血量で確認した.また,体成分分析にて細胞外水分比に差が無いこと,術後栄養療法として1週毎の体重当たり投与kalと蛋白量にも差がないことを確認した.これを基に術後2週目までの体重,四肢骨格筋量,握力,10m歩行速度を1週毎の変化率としてSPSSver.19(IBM)を使用しMann–Whitney U test,χ2検定にて比較検討した.有意水準は5%未満とした.</p><p> </p><p>【結果】</p><p> 2群の内訳はサルコぺニア8例,非サルコぺニア32例であった.両群の基本属性には,年齢(歳)85.9vs70.9や%肺活量74.1vs87.7,ADL(点)81.3vs99.1に差を認めた.術後1週毎の変化率(%)は,体重-2.5±3vs-2.9±4,-6.7±4vs-3.8±4,骨格筋量3.2±17vs-1.8±8,-5.7±15vs-3.6±8,握力-5.7±23vs-7.7±13,-9.5±vs-15.1vs19,10m歩行速度140.6±41vs153.2±118,100.6±0vs181.9±96であり,すべての項目で差を認めなかった.</p><p> </p><p>【考察および結論】</p><p> サルコペニアに関わらず,侵襲により術後早期の体成分や身体機能は低下したが,術後早期の異化反応とも考えられ,有意差は認められなかった.しかし侵襲を受けた生体の同化反応は晩期であり,予備力の乏しいサルコペニアが機能回復に時間を要する事は容易に想像できる.今後は多施設とも協力し長期的機能変化を調査するとともに,術前から退院,社会復帰まで継続して支援できる体制を我々は講ずる必要があると考える.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>抽出したデータは当院の倫理規定に準じID化し個人が特定されないよう配慮し検討を行った.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), A-76_2-A-76_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158123776
  • NII論文ID
    130007692580
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.a-76_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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