基本チェックリストの使用項目の違いによる新規要介護認定発生の予測精度の比較

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抄録

<p>【はじめに、目的】介護保険法の改正により、自治体では基本チェックリストの悉皆調査が必須ではなくなった。しかし、リスク者の効率的な把握や新しい総合事業のケアマネジメントのために、基本チェックリストを地域や自治体のサービス窓口などで柔軟に活用することが必要である。そこで本研究では、基本チェックリストを柔軟に活用するための科学的根拠を得るために、基本チェックリストの使用項目の違いによる3ヶ月後の新規要介護認定発生の予測精度を比較した。</p><p> </p><p>【方法】本研究では、平成27年度に東京都A市が65歳以上の要介護認定がない者と要支援者を対象に実施した基本チェックリストを含む郵送調査のデータを使用し、調査に回答した者のうち基本チェックリストの回答が1項目以上の者17,785名を対象とした。解析は、始めに従属変数を3ヶ月後の要介護認定(要介護1〜5)の有無、独立変数を基本チェックリストの全項目として、性・年齢を補正した多重ロジスティック回帰分析を行い、要介護認定に寄与する項目を抽出した。次に、1) 抽出した基本チェックリストの項目、2) 全25項目、3)うつ予防・支援を除く20項目の3つのモデルによる3ヶ月後の新規要介護認定発生のReceiver operating characteristic(ROC)分析を行った。さらに全てのモデルにおいてYouden indexを用いてカットオフ値を算出し、感度・特異度を算出した。</p><p> </p><p>【結果】対象者のうち3ヶ月後の新規要介護認定者は81人(0.5%)であった。多重ロジスティック回帰分析によって抽出した基本チェックリストの項目は、IADLから3項目、運動器の機能向上から1項目、栄養改善から1項目、認知症予防・支援から1項目、うつ予防・支援から2項目の全8項目であった。各モデルのROC曲線下面積は1)抽出した8項目で0.932、2)全25項目で0.920、3)うつ予防・支援を除く20項目で0.919であった。さらに、Youden indexによる各モデルの最適カットオフ値は1)抽出した8項目で3項目、2)全25項目で9項目、3)うつ予防・支援を除く20項目で8項目であり、それぞれの感度・特異度は1)92.6%・82.1%、2)87.7%・85.1%、3)82.7%・89.7%であった。</p><p> </p><p>【結論】基本チェックリストの抽出した8項目、全25項目、うつ予防・支援を除く20項目の3ヶ月後の新規要介護認定発生の予測精度はいずれも感度と特異度がともに80%以上と高く、新規要介護認定発生の予測に使用できることがわかった。感度は抽出した8項目で最も高く、運動機能低下や低栄養などの各リスクの把握には全項目の聴取を行うことが望ましいと考えられるが、新規要介護認定発生の予測には抽出した8項目が使用できることが示唆された。また、特異度はうつ予防・支援を除く20項目で最も高いことも分かった。本研究において示したこのような特性は基本チェックリストを活用する際に役立つと考えられる。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究では東京都A市が介護予防事業の一環で実施した自記式アンケートの匿名化された(特定の個人を識別できない)データを研究目的で二次分析しており、データの研究への活用については東京都A市から承認を得ている。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-152_1-C-152_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158135936
  • NII論文ID
    130007692616
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-152_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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