クリーゼを発症した抗LRP4抗体陽性重症筋無力症患者に対し運動負荷量に留意したリハビリテーションを施行した症例

  • 森 貴史
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 柴田 篤志
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 森 友洋
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部
  • 門野 泉
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション科
  • 勝野 雅央
    名古屋大学医学部附属病院 神経内科
  • 熱田 直樹
    名古屋大学医学部附属病院 神経内科
  • 西田 佳弘
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション科
  • 永谷 元基
    名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部

説明

<p>【はじめに・目的】</p><p> 重症筋無力症(MG)は、神経筋接合部の刺激伝達が障害されて生じる疾患であり、手術ストレスや運動過負荷を誘因に、クリーゼと呼称される呼吸・球麻痺症状の増悪、全身性の筋力低下を来すことがある。クリーゼ発症後はリハビリテーション(リハ)により過用症候群を引き起こし、症状を再燃させるリスクがあるため、早期から積極的なリハは行われないことが多い。しかし、過度の安静によりディコンディショニングが惹起される可能性があるため、早期予防が重要となる。一方で、クリーゼ発症後の運動負荷量の設定を判断する指標は乏しい。</p><p> MG患者に対し運動療法の介入を推奨する報告(Nils G, Jan V 2015)はあるが、運動負荷量の詳細は不明である。今回、クリーゼを来し、ICUに入室した抗LRP4抗体陽性MG患者に対し、運動負荷量の設定に留意したリハを実施したため、ICU退室後のリハに着目して報告する。</p><p>【方法】</p><p> 対象は筋力低下、呼吸苦の精査目的に入院した60歳代男性。入院3日後にリハ開始となった。入院時のADLは自立されていたが、入院4日後に呼吸苦増悪し、人工呼吸器管理のためICU入室となった。入室後、MGのクリーゼと診断され、ICUにてステロイドパルス(mPSL)3日間、免疫グロブリン大量療法(IVIg)5日間実施されたが、奏功乏しく、血漿交換療法が加療された。ICU入室後より、コンディショニングを中心にリハを再開した。入院26日後にICU退室となったが、入院34日後にクリーゼ再燃し、ICU再入室した。再入室後はIVIgを5日間施行し、免疫抑制剤が併用された。入院55日後にICU退室となり、併存疾患のホジキンリンパ腫に対する化学療法が開始された。入院84日後、症状の改善に伴い人工呼吸器離脱となった。リハでは、ADL練習や自動運動を開始した。運動負荷量は疲労感、呼吸苦を修正Borg4以下で設定し、負荷量を調整した。その際、呼吸数の著しい増加やSpO2の低下の有無を監視した。評価は、筋力測定を1週間毎に行い、筋力低下、筋疲労の有無を確認しながら運動負荷量を調整した。入院93日後よりリハにて歩行を開始し、同時期よりリハ室でエルゴメーター、機器での12-15RMの運動を開始した。入院157日後にADL自立となり自宅退院となった。なお、今回のリハにより、筋力低下や呼吸苦などの有害事象は発生しなかった。</p><p>【結果】(入院55/97/139/153日後)※ICU退室後より評価</p><p> ADL(Barthel Index)は0/85/100/100 点、MG-ADLスケールは22/12/5/2点、握力は左右平均9.5/20.3/32.8/33.2 kgf、膝伸展筋力は左右平均0.0/16.5/20.8/24.7 kgf、6MWDは0/240/430/459 mであった。</p><p>【考察】</p><p> 今回、治療と並行したリハの実施により退院時にADLは自立し、筋力、運動耐容能は改善した。本疾患において、ICU退室後に化学療法と並行して運動時の疲労感と筋力の変動を指標に段階的に負荷量を調整したリハを行ったことで、クリーゼを来したMGのディコンディショニングの予防に寄与した可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本学生命倫理委員会の承認を得た上で、本人の同意を得て作成した(承認番号:2018-0019)。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-127_2-E-127_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158154496
  • NII論文ID
    130007692960
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-127_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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