HAL医療用下肢タイプを使用した練習により自宅での歩行介助量が軽減した筋萎縮性側索硬化症の一症例

DOI
  • 加藤 大作
    済生会神奈川県病院 済生会東神奈川リハビリテーション病院
  • 岡部 憲明
    済生会神奈川県病院 済生会東神奈川リハビリテーション病院
  • 宮澤 忠宏
    済生会神奈川県病院 済生会東神奈川リハビリテーション病院
  • 西田 大輔
    済生会神奈川県病院
  • 原 一
    済生会神奈川県病院

抄録

<p>【はじめに】</p><p> 当院では平成28年12月よりCYBERDYNE 株式会社により開発された医療機器であるHAL®医療用下肢タイプ(以下HAL)を導入している。近年HALに関する報告は散見するが、筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)に対する効果についての報告は少ない。そこで今回HALを使用した練習により自宅での歩行介助量が軽減したため報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p> 症例は46歳男性。競走馬のトレーナーをしていたが12年前に落馬し中心性頚髄損傷(損傷高位C2)となった。その後独歩可能となったが徐々に歩行能力低下。7年前構音障害、舌萎縮認めALS疑いで当院神経内科入院しALSと診断された。6年前下肢痙縮が増悪しバクロフェン髄注療法を開始し、5年前より両下肢の内反尖足に対し下肢装具(CEPA)、室内用補高靴処方された。屋外は電動車いす、自宅内は妻が両腋窩を支持した介助歩行で移動可能であった。しかし装具を装着してもはさみ足歩行、両足部内反尖足強くなり、首下がりもみられるようになった。歩行介助量増大したため当院入院となりHALを使用した練習を開始した。入院時評価:ALSFRS-R23点。関節可動域は股関節外転5°/0°、足関節背屈-25°/-15°。Modified Ashworth Scale (以下MAS)は股関節内転筋3、下腿三頭筋3。歩行は両腋窩を支持し中等度介助要していた。連続歩行は10m可能。歩行中両足部内反尖足、はさみ足強くなり振り出し時下肢と下肢が接触してしまい振り出せないことがあった。また5m程度歩行すると首下がりが出現した。</p><p>【経過】</p><p> HALでの練習は週2~3回、合計10回実施。他に通常の理学療法を週2~3回、作業療法を週5~6回実施。HALでの練習は転倒防止用のハーネスサスペンション付き歩行器(All in one)を使用した。ハーネス装着しても頸部・体幹前傾してしまうため歩行器の持ち手に前腕を伸縮ベルトにて固定し、前腕で支持し体幹を伸展できるようにした。HALを装着し両膝屈伸運動と歩行を実施し、HALによる歩行練習は適宜休憩をしながら合計120~180m程度実施した。退院時評価:ALSFRS-R 23点。関節可動域は股関節外転15°/15°、足関節背屈-15°/-5°。MASは股関節内転筋2、下腿三頭筋2。連続歩行距離は20m可能。両足部内反尖足、はさみ足は軽減、頸部伸展保持可能となり歩行介助量の軽減がみられた。HALでの練習終了後、自宅への外泊を実施。本人及び介助者からは入院前と比べ歩行介助量軽減しており、自宅内の段差もスムーズにまたぐことができるようになったとの発言があった。</p><p>【考察】</p><p> 今回HALを使用した練習により連続歩行距離が増大、歩行介助量軽減が認められ本人、介助者の負担軽減につながった。適切な設定での歩行アシストにより効率的な歩行動作の学習を促し歩行能力が改善したと考えられる。今後の課題としてはHALを使用した練習によりどのような運動学的変化が生じるのか表面筋電図計や三次元動作解析などを用いることにより詳細な評価を行っていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、対象者には紙面および口頭で症例報告の目的を十分に説明し、本人の自由意志による同意を文書で取得して実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-66_2-E-66_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158170496
  • NII論文ID
    130007693139
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-66_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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