脳動静脈奇形(AVM)破裂による四肢麻痺を呈する若年者の生活支援
Bibliographic Information
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- -自己決定を促す過程に着目して-
Description
<p>【はじめに】</p><p>脳動静脈奇形(以下AVM)は、先天性異常と考えられている血管の病気である。AVMが破裂すると、脳出血やくも膜下出血をきたし、身体の麻痺や言語障害といった後遺症が残ることがある。発症は若年者が多く、損傷した部位や程度により個人差は大きいが、残されたその後の人生の再構築を支援していくことが重大な課題と言える。今回、AVM破裂により小脳出血をきたし、四肢麻痺を呈した若年者に対し、退院時より介入し、社会参加を目標とした生活支援を経験したので報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>AVM破裂により小脳出血を発症、四肢麻痺を呈した22歳男性である。ブルンストロームはⅤレベルで分離は比較的良好だが、失調性の麻痺があり動作に支障をきたしていた。覚醒は低かったが、知的には保たれていた。発症前は自動車整備の専門学校に在籍し整備士を目指していたが、発症により退学している。退院時(発症5ヶ月後)は寝たきりの状況であったが、若年であり損傷部位が小脳のみと限定的であることから、機能回復が望めるとチームで判断し、何らかの社会参加を目標に介入を開始した。</p><p>【結果】</p><p> 自宅に階段昇降機を設置、屋外アクセスが1人介助で可能となり、当センター自立訓練事業への通所が開始された。通所2ヶ月後には、起居・移乗動作は見守りレベル、施設内での車椅子駆動(足こぎ)が可能となり、歩行器歩行も中等度介助で短距離は可能となった。できることが多くなる一方、「安楽死させてくれ」といった発言が聞かれ、表情も暗く他社と交流することはなかった。週1~2回の頻度で基本動作訓練実施し、「できるようになったこと」のポジティブフィードバックを実施し、「今後できるようになると思うこと」を伝え、都度目標を共有を継続した。発症から13ヶ月後、起居移乗動作が自立し、歩行器歩行も見守りで可能となった。更なる活動範囲の拡大を考え、電動車椅子の評価を開始した。また、タクシーを用いた単独外出を練習し、自立に至った。社会参加について目を向けてもらうために、同病の若年者と交流を設定すると、徐々に「やりたいこと」の表出が見られるようになり、「自動車運転免許取得に挑戦したい」との言葉が聞かれるようになった。挑戦した結果、免許の取得には至らなかったが、「PC入力による在宅就労」への意欲が聞かれるようになった。現在、就労移行支援事業所に所属、自宅にてPCを勉強し、在宅就労を目指している。</p><p>【結論】</p><p>AVM破裂の若年中途障害者に対する支援は、回復を予期しにくく、また喪失感が大きいため、自己決定を引き出すまでに長期的な関わりを必要とした。ポジティブフィードバックと目標の共有を都度、継続的に実施し、意思の表出を待つことは、自己決定を促す支援が有効であると思われた。また、同病者との関わりや経験を積み重ねながら「やりたいこと」の「出来る方法」を模索していくことが重要であると考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本症例発表に当たり、本人・家族には研究の主旨を十分に説明し同意を得た。</p>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 46S1 (0), G-118_1-G-118_1, 2019
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288158187904
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- NII Article ID
- 130007693349
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed