訪問リハビリにおいて自己効力感が向上し活動に繋がった1症例
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- 山﨑 登志也
- 福岡リハビリテーション病院
書誌事項
- タイトル別名
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- -活動日記を用いて-
抄録
<p>【はじめに】訪問リハビリテーション(訪リハ)は心身機能・活動・参加にバランスよく働きかけることが推奨されているが、心身機能に固執し、活動や参加に赴かないことがある。疼痛によるネガティブな思考や破局的思考の憎悪が不安を助長し活動性の低下をきたし、さらなる疼痛を招くとされている。</p><p>今回、疼痛により破局的思考や不安・抑うつ傾向となり自己効力感が低下した症例に活動日記を使用し、疼痛の軽減と活動量が増大したため報告する。</p><p>【症例紹介】80歳代女性。現病歴はX年5月誘因なく腰痛出現。第4腰椎圧迫骨折と診断。安静目的にて当院入院。8月に自宅退院し訪リハ開始。既往は23年前に右TKA。6年前に腰部脊柱管狭窄症の手術。4年前に左TKA。3年前に右大腿骨頚部骨折の手術。</p><p>訪リハは自宅内の移動能力向上を目的に開始。X+1年に目標達成。しかし、痛みの訴えが強く、活動性は乏しいため、目標が「近くのスーパーに歩いて買い物に行けるようになる」に変更。</p><p>【評価】(X+1年)</p><p>身体機能はADLに支障をきたす著明な問題なし。</p><p>痛みはNumerical Rating Scale(NRS):8。</p><p>心理機能はPain Catastrophizing Scale(PCS):48点(反芻19点,無力感18点,拡大視11点)。</p><p>The Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS):22点(不安12点,抑うつ10点)。</p><p>Pain Self Efficacy Questionnaire(PSEQ):31点。</p><p>生活空間はLife-Space Assessment(LSA):45点。</p><p>身体活動量は活動量計(オムロン社製、HJA-750C Active style Pro)を1週間装着。宮本ら(2014)を参考に運動強度を1.5METs以上3.0METs未満(生活活動)・3.0METs以上(歩行活動)に分類し、各々の身体活動時間を算出(分/日)。生活活動:245.9±55.9 。歩行活動:10.6±2.8。</p><p>【方法】目標達成の為「痛みをコントロールして屋外歩行ができる」ことを目的に活動日記を提案。活動日記では日付・痛みの程度(NRS)・歩数(携帯電話の万歩計機能)・コメントを毎日記録。活動日記開始時は痛み8、歩数は250歩程、コメントは「痛くて何もできない」と、ネガティブな記載が多かった。そのため、訪問時には、「できた事、先週と比べてどうか」など過去を振り返りながら、痛みではなく活動量や達成感に目を向けるような正のフィードバックを実施。</p><p>【結果】(X+2年)</p><p>NRSは3。</p><p>PCS(点):12(反芻7,無力感2,拡大視3)。</p><p>HADS(点):3(不安1,抑うつ2)。</p><p>PSEQ(点):53。</p><p>LSA(点):54</p><p>身体活動量(分):生活活動298.4±58.1。歩行活動13.7±4.6。活動日記のコメントは「家の周りを歩けた」など。</p><p>目標の「近くのスーパーに歩いて買い物に行く」は訪リハ中には実施できた。</p><p>【結論】今回、活動日記を用いて正のフィードバックをすることで達成感が得られた。これにより自己効力感が向上し、破局的思考や不安・抑うつなどのネガティブな思考が軽減した。そのため疼痛が軽減し、生活空間の拡大と生活活動量の増大に繋がった。訪リハにおいて活動日記を用いることは自己効力感が向上し、活動・参加にバランスよく働きかけることに繋がる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】症例には当院倫理規定の研究説明書・同意書にて、十分な説明を行い書面で同意を得た。当院倫理委員会の承諾を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), G-127_2-G-127_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288158190720
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- NII論文ID
- 130007693378
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可