健常者と頚部痛を有する者の Visual Display Terminals(以下 VDT 作業)時における頚部筋活動の相違

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  • -振幅確率密度関解析(amplitude probability distribution function analysis:以下 APDF 解析)、同時筋活動指数での考察-

抄録

<p>【はじめに,目的】昨今、様々な職業でコンピュータを長時間使用から筋骨格筋系に不安を抱えながら就業しているものも少なくない.そのことからも VDT 作業時の座位姿勢に対する多くの研究がなされている.O'Sullivan らは床面に対し骨盤が垂直に立った姿勢(neutral),胸を突き出した姿勢(protrusion)等の筋活動を計測し,protrusion は neutralに比べ表在筋活動が高くなることから,座位姿勢訓練の重要性を報告している.Kwon らは頭部前方偏移を呈した者に対して,口頭指示で修正した姿勢がその他の姿勢に比べ僧帽筋の筋活動が低下したことを報告している.座位姿勢によって頚部の負担軽減になることは,どの研究でもほぼ一致している.これまで健常者と頚部痛を有する者の VDT 作業時の頚部筋活動の相違や健常者の座位姿勢にセラピストが関与した筋電図学的研究は散見される.しかし,健常者と頚部痛を有する者の両者においてセラピストが姿勢に関与した場合の頚部周囲の筋電図学的研究は見あたらない.そこで今回頚部痛を有する者と,健常者の両方に姿勢に対して口頭指示を与え,良座位姿勢時の頚部周囲の筋活動を計測し,今後の治療・指導に活かす目的で研究を行った.</p><p>【方法】被検者は健常者 8 名(26.1±2.7)と頚部痛を有する者 8 名(34.5±5.2)とした.頚部痛を有する者は,過去 1 年間で頚部痛により病院を受診したもので,NDI は 10/50 以上の者とした.20 分間の VDT 作業を行い,その後の2 分間表面筋電図を用いて頚部筋活動を計測した.セラピストは,10 分間ごとに 1 回のみ姿勢に対する口頭指示を与えた.環境設定として,椅子の高さは身長×0.23 と設定した.表面筋電図は Mediarea Support 企業組合のEMG マスターを用いた.計測筋は左右の胸鎖乳突筋,僧帽筋上部の 4 筋とした.エクセルから APDF 解析を行い,作業時筋活動における許容値を求めた.また左右の僧帽筋と胸鎖乳突筋の両筋の同時筋活動指数を求めた.</p><p>【結果】APDF 解析においては頚部痛を有する者が,健常者に比べ許容値より高値を示した(P=0.1).同時筋活動においては,健常者に比べ頚部痛を有する者は低値を示めした.</p><p>【結論】Jhonston らは, 健常者における VDT 作業にて健常者においても頚部筋同時活動が増加したことを報告している.本結果より,健常者は姿勢がある一定の効果が得られるが,頚部痛を有する者は姿勢制御の変化が報告されており,姿勢に対する関与のみでは筋活動が高値を示したことから,身体の機能障害に対するアプローチの重要性が示唆された.また,座位姿勢という静的アライメントの研究のみでなく,異なった視点での研究の必要性がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,被検者への研究協力及び参加説明の際には十分な説明と本人の同意を得て,データ計測を実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-243_2-H2-243_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158236672
  • NII論文ID
    130007693890
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-243_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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