肢節間協調の制御機構
-
- 平岡 浩一
- 大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科
抄録
<p> 歩行などのリズミカル運動では中枢パターン発生器(central pattern generator; CPG)が駆動される。左右異なる速度で動くトレッドミル上で乳児を歩行させると左右異なるリズムのステップで対応するという知見などから,CPGは左右独立して存在すると考えられている。また,胸髄レベルで離断した除脳動物において,上・下肢のリズミカルな筋収縮をそれぞれ個別に誘発できるという知見から,上肢と下肢のCPGもそれぞれ独立しているとされる。各肢の制御を目的に独立して存在するCPGであるが,それらは固有脊髄路を介して互いに協調している。除脳動物において薬物を投与すると上下肢の協調したリズミカル運動が生じるが,その後胸髄レベルでも脊髄を離断するとこの協調は消失することから,固有脊髄路が上下肢のCPGを協調させていることがうかがえる。ヒトにおいても上肢の歩行様の腕振りにより,歩行時のパターンに合致したヒラメ筋H反射の相依存的な変調が同側と対側双方に出現する。これは,ヒト歩行時における上下肢CPG間の協調を裏付ける知見である。固有脊髄路は対側へ分岐した経路を介して左右肢の協調にも関与する。たとえばヒトにおいて,片側足関節のリズミカル運動をすると,安静している側のヒラメ筋H反射がtonicに抑制される。つまり,片側CPGの駆動は安静にある対側伸筋に対して持続性の強い交差性抑制をもたらす。これに対して両側足関節の交互運動をしている時には反対側に対しては位相依存的な抑制が生じるが,両側足関節の同位相性運動をするとその抑制は生じない。これは,両側を交互にリズミカルに活動させる歩行などに特化して位相依存的な抑制が生じることを示唆する。さらに重要なのは,リズミカルでない運動中は固有脊髄路を介した上下肢の協調を示唆する皮膚反射が消失することから,固有脊髄路を介した四肢運動協調は課題依存的に柔軟に回路を開閉できるという知見である。</p>
収録刊行物
-
- 理学療法学Supplement
-
理学療法学Supplement 46S1 (0), I-15-1-I-15-1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001288158259840
-
- NII論文ID
- 130007694150
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可