変性半月板修復術後理学療法の経験

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タイトル別名
  • -長期にわたりロッキングが放置された変性半月板の治療1例-

抄録

<p>【目的】半月板損傷の外科的治療として修復術と切除術があり、半月板の断裂部位、断裂形態により術式が選択される。しかし、半月板の血流、変性及び様々な損傷形態、理学療法(以下PT)長期化を理由に切除術を選択されることが多い。切除術による長期成績では、変形性膝関節症のリスクが危惧されるため、当院では無血行野における断裂についても、fibrin clot(以下FC)を用い、修復術を積極的に行っている。現在FCを用いた修復術後の理学療法に対する報告は少なく、PT治療方針も確立されていない。今回、長期にわたりロッキングが放置された変性半月板修復術後の理学療法経験を以下に報告する。</p><p>【方法】症例:47歳男性、バレーボール中レシーブ動作において膝関節屈曲、下腿内旋で受傷。受傷後4ヶ月を経過し、疼痛、関節可動域(以下ROM)制限の増悪により当院初診。初期評価時、膝関節屈曲60°、伸展-30°、KOOS pain が5.5であり、内側半月板バケツ柄断裂の診断により手術を施行した。内側半月板はred-white zoneの広汎なバケツ柄断裂で顆間に嵌頓した。inside-out法にて半月板縫合術を行い、断裂部にFCを充填した。術後翌日より介入し、術後3週免荷、術後3週後よりROM練習、tolerance weight bearing にて歩行練習を開始した。疼痛は、KOOS painは66.6、ROMは膝関節屈曲45°、伸展-20°であった。術後16週後よりジョギング、術後6ヶ月にてスポーツ復帰。運動療法は、伸展機構に対する伸展性の獲得を目的とした練習、早期より感覚運動トレーニングを中心に実施した。</p><p>【結果】ROMは、術後3ヶ月にて膝関節屈曲130°伸展-5°、術後6ヶ月にて膝関節屈曲140°伸展-5°、術後12ヶ月にて膝関節屈曲140°伸展0°となり、KOOS painは、術後3ヶ月で72.2、術後6ヶ月で83.3、術後12ヶ月にて97.2となった。筋力は、術後6ヶ月にてMMT5レベルとなった。競技復帰は8ヶ月後で可能となった。</p><p>【考察】FCを用いた修復術直後PTの中心は修復部の保護とリモデリングに応じた荷重量や運動負荷の設定が重要となる。当院においてFCを用いた修復術後PTは3週免荷と術後3週後よりROM練習の開始をプロトコールとしている。また、早期より足底感覚への促通や股関節周囲筋、バランストレーニングを実施しbody imageと動作の再構成を促し修復部の保護につながると考える。しかし、今回のプロトコールにおいては荷重開始とROM練習開始が同時のため、十分な膝関節ROMが確保されずに歩行が開始している。そのため、荷重時における半月板前方組織への負担が大きく損傷のリスクがあるため、今後変性半月板修復術後のプロトコール検討の必要性が示唆された。</p><p>【結論】ロッキングを4ヶ月放置された変性半月であっても、解剖学的修復がなされればPTによって関節拘縮は改善できる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、研究の概要、倫理的配慮、公表の方法などについて当院倫理委員会で審査を受けその承認のもとに実施した。また、対象者は本研究の趣旨を書面によって十分に説明し、理解をした上で同意書を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-140_1-I-140_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158265344
  • NII論文ID
    130007694209
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-140_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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