脊髄性筋萎縮症Ⅰ~Ⅲ型に対する理学療法の実態調査

DOI
  • 鈴木 隼人
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 長谷川 三希子
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 内尾 優
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 加島 広太
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 中村 花穂
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 齋藤 翠
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 和田 太
    東京女子医科大学 リハビリテーション科
  • 荒川 玲子
    東京女子医科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科
  • 斎藤 加代子
    東京女子医科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科
  • 猪飼 哲夫
    東京女子医科大学 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy以下SMA)は筋萎縮・筋力低下を主症状とする希少疾患であり、理学療法(以下PT)による介入が重要であるが、我が国におけるPTの実態は不明である。一方、米国では、個々の患者が受けたPTサービスを調査し、SMAの自然歴との関係について検討が進められている。そこで今回、日本のSMAに対するPTの実態調査、並びに日米での差異を検討する目的で、アンケート調査を施行した。</p><p>【方法】対象はSMA家族の会の正会員でⅠ~Ⅲ型の221家族である。研究デザインは横断研究、無記名による記入式質問紙を用いた郵送調査法とし、個人情報の保護のため、質問紙はSMA家族の会の事務局より発送、研究担当者宛で回収した。調査項目は米国の調査であるS. Dunawayらの報告に準拠し、基本情報、PTの有無、頻度、プログラムの内容(関節可動域運動、筋力トレーニング、有酸素運動、発達機能練習、呼吸療法、その他)とした。まず調査項目の記述的分析を行い、PT頻度を、①歩行能力別(歩行可能・不可能)、②タイプ別、③年齢別(0-3歳、3-5歳、5-12歳、12-18歳、18歳以上)に分類し、群間で比較した。統計解析は、①Mann-WhitneyのU検定を、②③はKruskal-Wallis検定後、多重比較としてSteel-Dwass法を用いた。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】回収率は61.1 %(135人)であった。平均年齢は18.9 ± 17.1(1-79)歳、性別は男性46.7 %、タイプはⅠ、Ⅱ、Ⅲ型が35.8 %、47.8 %、16.4 %、歩行可能は11.1 %であった。PTは84 %(110人)で介入されており、頻度は4.16 ± 3.0(0-18)回であった。①歩行能力別では頻度に有意差を認めなかった。②Ⅰ型はⅡ型と比較し頻度が有意に高かった。③年齢別では3-5歳が5-12歳、12-18歳、18歳以上、それぞれより有意に頻度が高かった。その他の年齢間では有意差を認めなかった。PTプログラムの内容は、関節可動域運動94.5 %、筋力トレーニング16.4 %、有酸素運動1.8 %、発達機能練習29.1 %、呼吸療法44.5 %、その他59.1 %であった。その他は主にマッサージによる介入であった。</p><p>【考察】米国の調査では、平均年齢は11.8 ± 12.3(2-49)歳、PTの頻度は7.1 ± 7.6(0-44)回であり、歩行不可能な患者でPTが多く介入され、年齢との間には負の相関関係を認めていた。本研究の対象者は、平均年齢は約7歳高く、頻度は月に約3回低い結果となった。歩行能力別や、学齢期以降でのPTの頻度に有意差を認めず、米国とは異なる結果となった。日本では能力・年齢に関わらず広くPTが提供されている実態が把握できた。PTプログラムは、拘縮予防や呼吸ケアなどの維持的な理学療法が多く行われており、それに対し筋力トレーニングなどの自動運動を用いた治療的介入は乏しい結果であった。欧米ではSMAに対しての筋力トレーニングの安全性、治療効果が報告されている。今後はSMAに対し機能改善を目的とした評価介入を考慮していく必要がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は「ヘルシンキ宣言」に基づき、倫理的配慮として、アンケート調査への協力のお願い文書、アンケート用紙と返信用封筒と共に、本研究の説明同意文書を同封した。説明文書には、アンケートの回答・返送をもって研究の参加に同意が得られたものとし、学術的公表を予定していることも明記した。なお、本研究は、東京女子医科大学倫理委員会の審査・承認を得ている。(承認番号4462)</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-56_2-J-56_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158278912
  • NII論文ID
    130007694352
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-56_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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