脳卒中患者のエネルギー出納と体組成・身体機能改善との関係性

DOI
  • 池田 崇
    昭和大学保健医療学部理学療法学科 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院 昭和大学スポーツ運動科学研究所
  • 加茂野 有徳
    昭和大学保健医療学部理学療法学科 昭和大学スポーツ運動科学研究所
  • 迫 力太郎
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院
  • 太田 隆之
    昭和大学藤が丘リハビリテーション病院

抄録

<p>【はじめに、目的】近年、リハ栄養の概念が広まり、リハ実施に伴うエネルギー消費に見合ったエネルギー摂取の必要性が認識されるようになった。回復期リハ病院では、脳卒中患者に対して1日当たり最大3時間のリハ介入が可能なため、急性期病院に比べてエネルギー消費が通常大きくなることからエネルギー出納が正になるように摂取量と消費量を調整することが望ましい。脳卒中患者ではDM等の疾病管理のため処方エネルギー量が制限されるケースや嚥下機能の問題で食指不良である等、十分なエネルギー摂取ができないことも多く、摂取量は必要量の85%に留まる(Foleyら)と言われている。そこで本研究は、脳卒中患者のエネルギー出納と体組成・身体機能改善の関係性について検討した。</p><p>【方法】2017年11月~2018年1月に回復期病棟に入棟した脳卒中患者の内、入棟時に監視で歩行が可能であった8名(男性5名、女性3名、年齢47-77)を対象とした。消費エネルギー量、摂取エネルギー量、エネルギー出納、骨格筋量、体脂肪量、下腿周径、Borg Balance Scale(BBS)、10m歩行時間を評価し、1か月後に再評価を行い変化割合と増減を求めた。エネルギー出納との関係性をスピアマンの順位相関係数を用いて評価した。消費エネルギー量の評価は、オムロン社製Active Style Proを使用し、連続5日間の中央値を用いた。筋量、体脂肪量の評価は生体インピーダンス法を用い、In Body社製In-Body S10を使用した。</p><p>【結果】エネルギー出納が負であった患者は8名中6名であった。6名中4名で筋量の減少を認めた(-2.7~-11.1%)。骨格筋量が減少しなかった2名も大幅な体脂肪量の減少を認めた(-32.2~-56.6%)。一方、BBS(+3~+13)と10m歩行時間(-1.8~-52)は全例で向上した。筋量、下腿周径、BBS、10m歩行時間とエネルギー出納との間に有意な相関関係は認めなかった。</p><p>【結論】エネルギー出納(+576~-562)が負で、筋量の減少を認めていた場合でもバランス能力や歩行能力の改善を認めた。一方、エネルギー出納が負の患者は全例で体脂肪量の減少を認め、余剰な体脂肪に乏しい状態であった。この点は、1か月程度の期間であればエネルギー出納が負であっても、余剰な体脂肪をエネルギー源とすることで、脳卒中患者はバランス能力や歩行能力の獲得が可能なことを示唆している。しかし、余剰な体脂肪に乏しい状態でエネルギー出納が負となった場合は筋量の減少を招き、身体機能の改善に影響を及ぼすかもしれない。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、昭和大学保健医療学部倫理委員会の承認を得た(承認番号:419号)。ヘルシンキ宣言に基づき、患者の人権に考慮して本研究の趣旨を説明し、同意を取得して実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-83_2-C-83_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158516608
  • NII論文ID
    130007692802
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-83_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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