めまい平衡障害患者における不安感情と身体活動量の関係

DOI
  • 塩崎 智之
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科/めまいセンター
  • 伊藤 妙子
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科/めまいセンター
  • 北原 糺
    奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科/めまいセンター

抄録

<p>【はじめに】</p><p>前庭神経炎後などの一側前庭障害によるめまい平衡障害に対する治療法の一つとしてめまい平衡リハビリテーションの有効性が報告されている。めまい平衡障害が起こる事でめまいに対する不安感情がうまれ,めまいを起こす動作に対して過剰に回避し不活動となり,さらに症状を悪化させるといった負のループに陥る。そのことが執拗に体動時のふらつきが続く前庭代償不全という病態の原因の一つに挙げられる(Yardley, 2000)。しかし,めまい平衡障害患者の不安感情と不活動の関係性やリハビリテーションの効果として活動の変化について客観的に調査された報告は存在しない。そこで今回,身体活動量計を用い,慢性期のめまい平衡障害患者における不安感情,主観的なめまい感と身体活動量の関係及びリハビリテーション介入による身体活動量の変化を調査したの報告する。</p><p>【対象と方法】</p><p>対象は奈良県立医科大学附属病院にてめまい平衡リハビリテーションを受けた慢性期めまい平衡障害患者14名(男4名,女10名)とした。リハビリテーション介入は前庭動眼反射,眼球運動,バランス訓練などの自主練習の指導を行う事と1週間の歩数,身体活動量を視覚的に提示して生活指導を行った。身体活動量の測定には3軸加速度を内蔵した身体活動量計Active Style Pro HJA-750(オムロンヘルスケア,京都)を用いた。入水時の活動を除いては起床から就寝までの活動を測定した。データの記録間隔は10秒間とした。測定期間は,介入前はリハビリテーション開始から2週間とし,介入後はリハビリテーション開始2カ月後から2週間とした。一日当たりの装着時間が600分以上のデータを7日間取れた時点で終了とした。身体活動量の指標として総装着時間における1.5Mets以下の全ての覚醒時の活動の割合を座位行動(Sedentary behavior:以下SB)として用いた。不安の評価としてState Trait Anxiety Inventory(以下STAI)を使用し,主観的なめまい感の評価はvisual analog scale(VAS)を用いた。統計解析はSTAI状態不安,特性不安,VASのそれぞれとSBの関係をspearmanの順位相関係数を用いて検討し,介入前後のSB,歩数の差を対応のあるt検定にて比較した。有意水準は全て5%とした。</p><p>【結果】</p><p>SBとSTAI特性不安の間に有意な正の相関を認めた(p<0.05,r=0.65)。SBとSTAI状態不安,SBとVASの間には有意な相関関係はみられなかった(p=0.24,p=0.74)。リハビリテーション介入前後でのSB,歩数に有意な差はみられなかった(p=0.52,p=0.31)。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果より不安特性をもっためまい患者がめまいの悪循環に陥りやすく,代償不全が長期化しやすい可能性が考えられた。今後,急性期からの前向き調査や罹患期間,身体機能面などを調査し,因果関係の検討を行う必要がある。また,介入前後でのSBと歩数に差がみられなかったが,開始時にSBの多い患者での改善効果はあり,対象者の数を増やして詳細に検討していくことで効果検証を行っていく。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には本研究の趣意を十分に説明し,同意を得た。なお本研究は所属施設の研究倫理委員会の承認を得ている。(奈良県立医科大学 医の倫理審査委員会 承認番号:889)</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-131_1-E-131_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158532992
  • NII論文ID
    130007693007
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-131_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ