高頻度に転倒を繰り返すパーキンソン病患者の屋内移動に対する訪問リハビリテーションの経験

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タイトル別名
  • ―車椅子駆動速度の改善に着目したシングルケーススタディ―

抄録

<p>【目的】パーキンソン病(Parkinson’s disease以下,PD)患者は歩行時にすくみ足現象や小刻み歩行が出現し,固縮による筋緊張コントロールの拙劣さや姿勢反射障害などが重なり転倒を引き起こすことは少なくない。先行研究においてもPD患者の転倒発生率は健常高齢者よりも高いとされ,その対策は通所リハビリテーション(以下,デイケア)や訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)領域での理学療法士の重要な役割であると考えられる。今回,在宅にて高頻度に転倒を繰り返すPD患者の移動手段を自走による車椅子駆動(以下,車椅子駆動)に変更しその車椅子駆動速度の改善に着目した訪問リハを実施し,興味深い結果が得られたので報告する。</p><p>【方法及び対象】80代女性。診断名はPD(罹患歴約4年),障害名は歩行障害,既往歴として腰部脊柱管狭窄症(術後),主訴は歩行障害,demandsは転倒せずに生活したいで,Hoehn-Yahrの重症度分類Ⅲ~Ⅳ度,生活機能障害度(厚生労働省)Ⅱ度,UPDRS-part3は21点,要介護度は要介護3であった。経過として平成27年7月頃より週1回の頻度で40分間の訪問リハを実施していたが,平成28年7月頃から徐々に姿勢反射障害やすくみ足現象が著明となり,屋内での移動速度低下や1日に複数回転倒することも増え始めたことから介護支援専門員より相談を受け,早急に結果が必要な事例であると判断し,本人,家族,医師,介護支援専門員,福祉用具相談員に承諾を得て屋内移動手段を車椅子駆動とした。しかしながら,導入直後は小刻みな車椅子駆動となり非効率的であった。そこで,車椅子駆動速度の改善を図るために平成28年7月下旬から9月下旬までをベースライン期(以下,A期)とし四肢を用いた車椅子駆動練習を実施,その後10月初旬から12月初旬までを介入期(以下,B期)として動作を単純化した車椅子駆動練習を実施した。A期とB期の効果を検討するために,車椅子駆動速度をmain outcome measureとしABデザインを用いたシングルケーススタディ(2SD-band-analysis)を実施した。なお,車椅子駆動速度の測定は居室からリビングまでの直線3 mとした。</p><p>【結果】A期の車椅子駆動速度の平均値は0.23±0.02 m/secであり,B期の車椅子駆動速度の平均値は0.41±0.05 m/secであった。その後,A期とB期の車椅子駆動速度をグラフにプロットしA期の平均値の2SD上限値を算出(0.2 m/sec)し,B期の車椅子駆動速度が全てその値を上回っていることを目視にて確認した。</p><p>【考察】結果よりPD患者の駆動速度の改善には四肢を用いた駆動練習より下肢を中心に用いた駆動練習が効果的であることが示唆された。PD患者の車椅子駆動は上肢の動きが小刻みとなり駆動効率が悪くなると述べられている。本症例においてはPD特有の注意分配機能低下により四肢を同時に効率よく使用できなかったこと等が要因であると考える。今後は症例数を増やして検討を行う必要性も示唆された。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-51-G-51, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158565376
  • NII論文ID
    130007693417
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-51
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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