意識障害を認める慢性期脳梗塞患者への自宅における長下肢装具歩行練習の経験

説明

<p>【はじめに・目的】</p><p>入院中の急性期・回復期脳卒中患者に対する,長下肢装具(Long Leg Brace以下LLB)を使用した立位・歩行練習による意識障害改善の報告はあるが,在宅の慢性期脳卒中患者に対する報告はみられない.今回意識障害を認める慢性期脳梗塞患者に対して,自宅でLLBを使用し立位・歩行練習を実施した.その結果,意識・活動・参加・粗大筋力に効果を示した症例を経験したので報告する.</p><p>【方法】</p><p>症例は70歳代男性で意識障害,嘔吐を認め救急病院へ搬送された.多発性脳梗塞と診断され保存的治療を経て,36病日当院回復期病棟へ転院し,213病日に妻と二人暮らしの自宅に退院した.215病日より装具非使用で立位・歩行練習を最大介助で週3回,訪問リハビリテーションで実施した.失語症,注意障害を認め,Brunnstrom stageは上肢右Ⅲ・左Ⅲ,手右Ⅱ・左Ⅱ,下肢右Ⅲ・左Ⅳで表在深部感覚は精査困難であった.慢性期意識障害スケールは状態スケール10・反応スケール17でFunctional Independence measure(以下FIM)は運動項目18点・認知項目11点であった.参加は妻の車椅子介助で買い物へ行くことが出来ていた.粗大筋力は下肢共同伸展右3・左4,下肢共同屈曲右2・左3であった.</p><p>しかし514病日頃には立位・歩行練習には全介助を要した.慢性期意識障害スケールは状態スケール6・反応スケール12でFIM運動項目15点・認知項目7点であった.車椅子介助での買い物へは行けなくなっていた.粗大筋力は下肢共同伸展右2・左3,下肢共同屈曲右2・左2となり,意識障害の悪化が活動・参加・粗大筋力に悪影響を及ぼしていると考えられた.本人・妻は自宅生活の継続を望んでいた為,意識障害を改善する必要があった.そこで516病日より右下肢LLB使用を開始した.554病日には立位保持練習10分,歩行練習50m×2SETを実施した.</p><p>【結果】</p><p>554病日の慢性期意識障害スケールは状態スケール8・反応スケール15となりFIM運動項目17点・認知項目8点であった.参加は妻の車椅子介助による買い物へ行くことが可能となり,粗大筋力は下肢共同伸展右3・左4,下肢共同屈曲右2・左3となった.</p><p>【結論】</p><p> 吉尾によると,脊髄視床路は脳幹網様体で側枝を出し,その感覚刺激によって網様体を賦活し,視床を介して大脳皮質を覚醒させるというシステムをもっている.立位保持による足底への荷重刺激は最も効果的なものであるとしている.本症例は,両側視床の梗塞により意識障害が遷延し,退院後の刺激入力減少により意識障害が悪化したと考えた.LLBの使用により,右側膝関節と足関節が安定し適切に床反力を捉えることが出来た.また介助量減少により,立位保持時間延長・歩行距離増加に繋がった.その結果,足底からの荷重刺激が増大し,急性期・回復期と同様に,意識障害の改善を認めたと考えた.そして自発性や意思疎通の改善が,わずかながら活動・参加を促進し,本人と妻の希望である自宅生活継続に至ったと考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本発表に関し本人・妻に説明し,同意書に署名を頂いた.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-71_1-G-71_1, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158573184
  • NII論文ID
    130007693506
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-71_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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