小学生の子どもを持つ親の身体活動に関連する自宅近隣の公園の利便性および特徴

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抄録

<p>【はじめに・目的】身体不活動は世界中で拡大しており、地域住民の健康増進や慢性疾患の予防を推進するために解決すべき重要な課題となっている。近年、近隣環境要因として、公園は近隣全体の活動的な雰囲気を高め、歩行やその他の余暇活動の機会を作ることから注目されている。自宅から公園までの利便性が良い (自宅からの距離が短い等)、公園の質が高い (設備が整っている等) と公園利用が促され、身体活動時間が長くなることが報告されている。平成28年の国民健康・栄養調査では、運動習慣のある者の割合は男女とも30歳代で最も低く、40歳代でも低いことが報告されている。子どもと利用できる魅力的な公園があることは、運動習慣者が少ない親世代の身体活動の機会を作るための役割を担う可能性が示唆されているが、日本において公園の役割については十分に検討されていない。そこで本研究の目的は、小学生の子を持つ親を対象に日常の身体活動に関連する自宅近隣の公園の利便性および特徴を明らかにすることとした。</p><p>【方法】対象は東京都国分寺市に住む小学生の子どもがいる保護者とした。住民基本台帳から無作為抽出した2,400世帯に研究参加の可否について郵送で調査し、協力が得られた対象者に質問紙を郵送し、男性・女性の保護者に回答を求めた。評価項目は、身体活動量として週当たりの中高強度身体活動時間を質問紙で評価した。公園に関する項目は、質問紙で自宅から公園までの所要時間、最も利用する公園の特徴 (景観や広さなど) について回答を得た。社会人口統計学的変数は性、年齢、BMI、教育歴、婚姻状況、就労状況、世帯収入とした。どのような公園の利便性や特徴が身体活動に関連するかを明らかにするため、中高強度身体活動(分/週) を身体活動ガイドラインの推奨値である週当たり150分に達しているか否かで二分し従属変数、質問紙より得た公園についての各項目を独立変数、社会人口統計学的変数を調整変数としてロジスティック回帰分析を実施した。</p><p>【結果】協力が得られ回答に不備のない者は445名 (男性45.6%) であった。ロジスティック回帰分析により、利便性として公園までの所要時間 (徒歩) が長い者は短い者よりも身体活動ガイドラインを満たしていた(OR=2.02, 95%CI=1.22-3.61)。また、利用公園の特徴の評価項目の中で、景観がよいこと (OR=2.70, 95%CI=1.41-5.20)、安全性が高いこと (OR=1.80, 95%CI=1.00-3.57)が身体活動ガイドラインを満たすことと関連していた。</p><p>【結論】本研究の結果より、小学生の子どもを持つ親が身体活動ガイドラインを充足するためには景観がよいことや安全性が高いという特徴を持つ公園の利用が関連することが示唆された。一方で、自宅から公園までの徒歩での所要時間(利便性)については先行研究と異なる結果となった。日本では利便性が不良でも公園を目的地として余暇歩行が促され、身体活動時間の増加に関連していると推察される。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の審査を経て早稲田大学総長より承認を得た(承認番号2017-245)。また、本研究で使用した住民基本台帳の閲覧は、法律に定められた方法にしたがい、本調査研究の目的や公益性、個人情報(名前、住所などの情報)の取り扱い方法を明らかにして、事前に調査対象の市に申請し、申請した目的以外には使用しないことを誓約したうえで許可を得た。なお、住民基本台帳の閲覧リストに載っている情報は住所・氏名・性・生年月日の4項目である。研究への参加は任意であり、プライバシーの侵害に関してヘルシンキ宣言に基づき対応した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-97_2-G-97_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158576384
  • NII論文ID
    130007693547
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-97_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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