脊椎圧迫骨折における離床様式とADLの関連性の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>脊椎圧迫骨折は、疫学的に高齢者に発症が多い骨折のため、長期の安静臥床に伴う認知面の低下や、廃用性筋力低下によるADL低下が懸念される。しかし、除痛目的の安静臥床期間にはガイドラインがなく、離床開始時期についても一定の見解がないのが現状である。また、脊椎圧迫骨折後の離床をすすめるにあたって、起立台を使用するケースもあるが、起立台の必要性についても明確なガイドラインが見当たらない。当院においては椎体圧潰のリスクが非常に高いものを除き、起立台を用いずに離床をすすめるケースもある。今回、起立台を使用した場合と使用しない離床方法についてADLの比較、検討を行うことを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>2016年4月からの2年間で、脊椎圧迫骨折にて保存的治療を目的とした当院入院患者95例(男性25例、女性70例)を対象とした。起立台を使用したもの(T群、60例)と、使用しないもの(N群、35例)の2群に分け、電子カルテにて後方視的に調査を実施し、退院時歩行様式と年齢、入院から歩行開始までの日数、在院日数、受傷前の歩行様式、退院時Barthel index(B.I.)との関連について検討を行った。統計学的分析は、Studentのt検定およびMann–Whitney のU検定、Spearmanの順位相関分析を行い、有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】</p><p>各調査項目の平均値をT群/N群の順に示す。年齢:79.3±12.1歳/86.4±6.8歳(p=0.00)、入院から歩行開始までの日数:19.2±6.5日/10.9±10.3日(p=0.00)、在院日数:50.8±20.4日/43.7±22.2日、退院時B.I.:81.8±21.5点/84.9±14.9点であった。退院時の歩行様式と相関が認められた項目は、T群、N群ともに、年齢(r=‐0.5105、p=0.00/ r=‐0.5417、p=0.00)、在院日数(r=‐0.4654、p=0.00/ r=‐0.3604、p=0.03)、受傷前歩行様式(r=0.7102、p=0.00/ r=0.7703、p=0.00)、退院時B.I.(r=0.7576、p=0.00/ r=0.6224、p=0.00)であった。退院時の歩行様式と入院から歩行開始までの日数については、T群、N群ともに有意な相関を認めなかった。</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>検定結果より、退院時の歩行様式と有意な相関がみられた調査項目はT群、N群ともに同様であった。在院日数との弱い負の相関がみられたことは、退院時の歩行様式が高次なものほど在院日数が短い傾向にあることが示唆された。また、退院時B.I.との正の相関がみられたことについては、歩行様式がより高次なものほど、退院時B.I.が高い傾向にあることが示唆された。退院時の歩行様式と受傷前の歩行様式との間に強い正の相関がみられたことから、受傷前の歩行様式は退院時の歩行様式に影響があるものと考えられる。先行研究において、受傷前の歩行および階段昇降能力の低下が、脊椎圧迫骨折患者の歩行能力を低下させる受傷前因子として示唆されたとの報告があり、今回の調査結果はそれに追従する形となった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は「ヘルシンキ宣言」にしたがい、データ収集・公表では個人情報が特定できないように匿名化を行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-232_1-H2-232_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158603520
  • NII論文ID
    130007693841
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-232_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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