体幹肢位を変化させた座位における姿勢制御と呼吸機能の関連性

DOI
  • 木村 友紀
    IMS(イムス)グループ イムス東京葛飾総合病院 リハビリテーション科
  • 西澤 岳
    IMS(イムス)グループ イムス東京葛飾総合病院 リハビリテーション科
  • 瀧澤 彩香
    IMS(イムス)グループ イムス東京葛飾総合病院 リハビリテーション科
  • 江戸 優裕
    文京学院大学 保健医療技術学部 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>体幹には、動作課題に合わせて肢位を変化させながら姿勢を保持する選択的な姿勢制御が求められる。さらに、動作時や安静時に関わらず、呼吸運動の継続は同時に求められ、円滑な日常生活を遂行するためには、これらを両立させる必要がある。このことから、理学療法においては、体幹肢位を変化させた状態でも恒常的に効率的な呼吸を継続できる体幹機能を構築することが重要といえる。</p><p>そこで本研究では、体幹肢位が変化しても効率的な呼吸が遂行できる優れた体幹機能を有する対象者の姿勢制御パターンを明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は健常成人24名(男性12名・女性12名、年齢24.3±2.1歳、身長165.7±8.5cm、体重59.6±7.5Kg)とし、座位での体幹中間位・20°右回旋位(以下、右回旋位)・20°左回旋位(以下、左回旋位)において、座位バランスと呼吸機能を計測した。座位バランスは、座面に設置した圧分布測定システムFDM-S(Zebris社)を用いて、10秒間の平均座圧中心(以下、COP)位置[前・右側(+)・mm%BH]と身体重心(以下、COG)総軌跡長[mm%BH]を計測した。呼吸機能は、オートスパイロAS-307(ミナト医科学社)を用いて、肺活量(以下、VC)[l]と一回換気量(以下、TV)[l]を計測した。統計処理はPearsonの相関係数を用いた(有意水準5%)。</p><p>【結果】</p><p>中間位における平均COP前後位置は-2.4±20.0、COP左右位置は-2.2±4.2、COG総軌跡長は11.9±11.0、VCは3.6±0.8、TVは0.8±0.3であった。</p><p>相関分析の結果、中間位におけるCOP左右位置と中間位(r=0.64)・右回旋位(r=0.65)・左回旋位(r=0.65)におけるVCに有意な相関が認められた。また、中間位におけるCOG総軌跡長と中間位(r=-0.41)・右回旋位(r=-0.41)・左回旋位(r=-0.47)におけるVCに有意な相関が認められた。</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果から、平均的に座位におけるCOPは左側に位置しており、COPが右に位置するほど、そしてCOG総軌跡長が小さいほど、中間位・右回旋位・左回旋位でのVCが大きいことが示された。</p><p>過去の研究によると、健常者の約9割は胸郭が左に偏位し(Ishizuka, et al. 2013)、これを正中化すると呼吸機能が向上する(Fujihara, et al. 2015)ことが報告されている。COPは上半身質量中心を座面に投影した点と解釈できることから、本研究の結果は胸郭の左偏位が小さい対象者ほどVCが大きいことを意味しており、これらの報告と矛盾しない。</p><p>以上のことから、座位において左側にあるCOPを正中化させ、重心動揺の小さい体幹機能を構築することによって、体幹肢位を変化させた状態でも効率的な呼吸機能を発揮でき、運動バリエーションの拡大にもつながると考えられる。</p><p>【結論】</p><p>座位においてCOPの左偏位が小さいほど、そして重心動揺が小さいほど、体幹肢位を変化させた状態で効率的な呼吸機能を発揮できる。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究はヘルシンキ宣言に基づいて実施した。対象者には本研究の目的および内容を十分説明し、書面で参加の同意を得た上で計測を実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-109_2-I-109_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158628864
  • NII論文ID
    130007694097
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-109_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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