電気刺激が非荷重を伴う関節固定にて生じるラット関節拘縮に及ぼす影響
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p>関節拘縮は,日常生活に支障をきたすため,治療が重要である。我々は,先行研究において,非荷重は関節固定によって生じる骨格筋のコラーゲン増加および伸張性低下をさらに助長させ,関節拘縮を重篤化させることを明らかにした。このことから,非荷重を伴う関節固定によって生じた関節拘縮は,関節固定のみの場合とは異なる病態であり,従来の関節拘縮に対する治療が有効であるか不明である。電気刺激は,関節拘縮の治療法の一つとして改善効果を有すると報告されているため,非荷重を伴う関節固定によって生じた関節拘縮に対しても改善効果を認める可能性がある。本研究の目的は,電気刺激が非荷重を伴う関節固定によって生じた関節拘縮に及ぼす影響を明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p>対象は,10週齢のWistar系雄ラット14匹とした。実験期間は1週間とした。すべてのラットは,右足関節を最大底屈位に固定し,後肢懸垂を組み合わせて実施した。群分けは,電気刺激を行わない刺激なし群と,電気刺激を行う刺激あり群とした。電気刺激は,1日1回30分を7日間実施した。電気刺激の条件は,刺激強度30V,周波数10Hzとした。刺激電極は,大腿後面の坐骨神経直上の皮膚に設置し,ヒラメ筋の筋収縮を誘発させた。評価項目は,実験開始前および1週間後の足関節背屈角度,1週間後のヒラメ筋のTypeⅠコラーゲン量とした。</p><p>【結果】</p><p>足関節背屈角度は,群と測定時期に交互作用があったため,単純主効果を求めた。その結果,両群とも1週間後の足関節背屈角度は,実験開始前と比較して有意に減少した。しかし,刺激あり群の足関節背屈角度は,刺激なし群と比較して有意に減少が抑制されていた。また刺激あり群のヒラメ筋のTypeⅠコラーゲン量は,刺激なし群と比較して有意に増加が抑制されていた。</p><p>【考察】</p><p>骨格筋は,コラーゲンが増加して伸張性が低下することで,関節拘縮を生じさせる。一方,電気刺激を実施した場合,骨格筋は,コラーゲンの増加を抑制して伸張性低下を防止することで,関節拘縮の発生を予防することが明らかにされている。本研究結果は,電気刺激がヒラメ筋のコラーゲン増加を抑制し,関節拘縮の発生を軽減したことを示すものであった。このため,電気刺激は,非荷重を伴う関節固定によって生じる関節拘縮に対しても予防効果を有することが明らかとなった。電気刺激の周波数の違いは,関節拘縮の予防効果に影響を及ぼす。このため,本研究において用いた電気刺激の周波数は,関節拘縮の治療に対して最適なものであるか不明である。今後は,電気刺激の周波数の違いに着目したさらなる研究が必要であると考えられる。</p><p>【結論】</p><p>電気刺激は,非荷重を伴って生じた関節拘縮の予防効果を有することが明らかとなった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>すべてのラットの苦痛は,麻酔を使用することで可能な限り排除した。本研究は,所属大学の動物実験指針に準じ,所属大学の附属動物実験施設を使用して所属大学の動物実験委員会の承認を受けて実施した(承認番号:第13MA009号)。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), I-150_1-I-150_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288158634368
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- NII論文ID
- 130007694153
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可