体幹回旋運動を伴う連続的な起き上がり動作のセグメント角運動量の解析

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説明

<p>【はじめに、目的】</p><p> 本研究は,身体を頭部,右上肢,左上肢,上胴,下胴,右下肢および左下肢にセグメントを区分し,起き上がり動作における各セグメント運動の角運動量を算出して,起き上がり動作において身体重心に作用する各セグメントの貢献度を知ることで,起き上がり動作時の身体運動の力学的機能を考察する.</p><p>【方法】</p><p> Sarnacki(1985)の分類による初動に上半身の体幹回旋運動を伴う起き上がり(Roll Off)をした 5名を選定し,本実験の被検者とした.被検者の平均年齢は23.6±3.8歳であった.各被検者が遂行した起き上がり動作をカメラで撮影し,その動画をFrame-DiasⅤで身体を15個の剛体になるようにデジタイズしてリンクセグメントモデルを作成した.</p><p> 全身の角運動量の算出方法は,湯(1995)による手法を用いた. 座標系は静止座標系で,X軸周りは背臥位から寝返りする方向, Y軸周りは背臥位から対称的に起き上がる方向,Z軸周り+は上から見て反時計周りである.各被検者の起き上がり動作におけるセグメント別の角運動量を時間正規化後に加算平均し,時系列的な角運動量変化を視覚化した.数量化のために,起き上がり動作の前半(Pivotが始まる前)と後半(Pivot以降)までに区分し,全身の角力積に対する各セグメント角運動量の貢献度を算出した.</p><p>【結果】</p><p> 右側への起き上がり動作前半について,Y軸周りの各セグメントの貢献度は,右下肢の振り下ろしと頭部の屈曲がそれぞれ45%,23%であった.Z軸周りの各セグメントの貢献度は,右下肢を外転方向の運動が77%であった.</p><p> 起き上がり後半において,X軸周りの各セグメントの貢献度は,上胴が44%であった.Y軸では右下肢と左下肢でそれぞれ34%と30%であった.Z軸では右下肢の外転運動が36%,左下肢を内転する動きが37%であった.</p><p>【考察】</p><p> これまで起き上がり動作での下肢の関与として,下肢を空中に保持して重力による影響下におくことで上半身離床するためのモーメントに関与していると言われていたが,本研究の結果からY軸で両下肢の角運動量が大きい事から,下肢のダイナミックな運動が上半身の離床に貢献していることがわかった.またZ軸の水平面のPivotに関しても,下肢のダイナミックな左右脚の協調された動きによってもたらされていることと考えられた.</p><p>【結論】</p><p> 上半身の離床および水平面上の回転には,下肢の運動量の関与が大きいことがわかった.これらの事から,下肢の空間上に自由に制御することが難しい症例においては,体幹回旋しながら連続的に端坐位になる起き上がり方略は難しくなると言える.</p><p> 実験の限界として,本研究では肘部や手部でベッドを押すなどの効果は計測されていないため,上肢を支持した時に受ける反作用による身体重心周りの角運動量への影響は無視できない.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究内容は本学の倫理委員会の承認を受けている.本研究に際して参加した被検者全員に,研究の内容を説明し同意を得ている.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-68_2-I-68_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158645632
  • NII論文ID
    130007694273
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-68_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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