昭和期「鯨の解体ショー」の研究(続報)

  • 石川 創
    公益財団法人下関海洋科学アカデミー鯨類研究室

書誌事項

タイトル別名
  • A follow-up report of “whale flensing performance” held in the Showa era in Japan.

抄録

<p>昭和期(1970年代~1980年代)に、スーパーマーケットや地域の祭りなどの集客イベントとして、各地で開催されていた「鯨の解体ショー」について、前報(石川 2014)以降に得られた情報と調査結果をまとめた。鯨の解体ショーは遅くとも1970代初期には流行しており、1980年代も人気は持続したが、商業捕鯨終焉に伴いそれまで使用していた小型ハクジラ類の価格が高騰し、1990年代初頭に消滅したと考えられる。これまでに開催場所が判明した都道府県は、前報の14都府県から21都府県に増加した。開催地の北限は山形市および仙台市で、それ以北の北海道、青森、秋田、岩手の各県での開催記録は見つかっていない。開催地が判明した都府県別の頻度では大阪府が最も多く、他県と比べて報道での発見がほとんどない事から、実際は珍しさに欠けるほど頻繁に開催されていたとも考えられる。鯨の解体ショーの主催者はスーパーマーケット等の大型店舗が最も多く、次いで商工会等の地域団体だった。特に、客足が落ちていた催事や祭を活性化するために鯨の解体ショーを導入した事例では、主催者の予想を上回るほどの反響があった。鯨の解体ショーにおける解体方式は、駐車場など屋外の仮設ステージ、トラックの荷台、および荷台に載せた「枠」と呼ばれるガラス張りの仮設小屋がある。このうち「枠」は、鯨の解体ショーが魚介類販売業にあたるため、保健所による衛生指導で作成されたが、屋外ステージでの解体販売については、保健所の許可を得るのが困難だった事例もあった。鯨の解体ショーを請け負っていた業者はこれまで二業者が判明しているが、他にも業者がいた可能性、またスーパーマーケット等が独自にショーを行っていた可能性も残された。下関鯨類研究室では鯨の解体ショーに関する調査を今後も継続する予定である。</p>

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