昭和期「鯨の解体ショー」の研究(予報)

  • 石川 創
    公益財団法人下関海洋科学アカデミー鯨類研究室

書誌事項

タイトル別名
  • A preliminary report of “whale flensing performance” held in the Showa era in Japan
  • ショウワキ 「 クジラ ノ カイタイ ショー 」 ノ ケンキュウ(ヨホウ)

この論文をさがす

抄録

<p>1970年代中旬から1980年代前半にかけて,今ならば魚市場の祭りなどで盛んに行われている「マグロの解体ショー」と類似した「鯨の解体ショー」と呼ばれるイベントが国内各地で行われていた.すなわち4~5 mの鯨を丸のまま会場に持ち込み,観客の前で解説をしながら専門業者が解体し,生肉を即売する形態のイベントである.しかし,日本の近代捕鯨史に関する様々な書物や資料をあたっても,鯨の解体ショーに関する記述は皆無に近い.このため下関海洋科学アカデミー鯨類研究室では,昭和時代に開催された鯨の解体ショーの実態把握と当時の日本人の生活文化に与えた影響を考察することを研究課題とし,調査を続けている.これまでの調査で,当時鯨の解体ショーを専業で行っていた方から聞き取りを行った他,インターネット情報,一般市民から得られた情報等を基に,地方紙記事検索や現地問い合わせを行い,1975年から1983年までの17件で開催場所と時期をほぼ特定した他,少なくとも6件の開催を確認した.地域は東北地方から関東,中部,中国,近畿,四国,九州地方まで多岐にわたり,スーパーマーケットやデパートの特売,商店街のイベント,農業祭など地域の祭り等で多く開催されていた.業者は注文を受けると,2tトラックに生あるいは解凍したゴンドウクジラ(内臓抜き)を積み,解体者および解体助手(兼運転手)の2名で現地へ向かった.基本的に業者は解体のみ請け負い,鯨肉の販売は主催者側が行った.鯨の解体ショーの特徴は,現地で解体販売した鯨肉の売り上げが主催者の収益となることで,主催者側に集客以上の利点があったこと,当時鯨肉は食べていても実物の「鯨」を見る機会がない人々に大きなインパクトがあったことから,解体前に展示会を行っていたりしたこと,都市部のみならず山間部での事例が多い一方で魚市場や港での開催が確認されなかったことなどが挙げられる.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ