特発性血小板減少性紫斑病と抗リン脂質抗体陽性を伴う患者の僧帽弁形成術の1例

DOI
  • 萩原 啓明
    独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 心臓血管外科
  • 中山 智尋
    独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 心臓血管外科
  • 小暮 あゆみ
    独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 血液内科

書誌事項

タイトル別名
  • A case of mitral valve reconstruction with idiopathic thrombocytopenic purpura and positive antiphospholipid antibodies

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抄録

<p> 症例は67歳女性.特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と抗リン脂質抗体陽性を指摘され,血液内科,膠原病科に通院していた.労作時息切れを訴えて循環器科を受診し,重症僧帽弁閉鎖不全症を指摘され,手術適応として心臓血管外科に紹介となった.手術に向けて血小板数を増加させるため,免疫グロブリン大量療法を行った.それにより血小板数は急激に増加し,抗リン脂質抗体による血栓症の懸念が生じたため,抗血小板,抗凝固療法を開始した.出血と血栓症の両者に対する慎重な対策を行い,特に問題なく僧帽弁形成術を終了し,出血,血栓症なく,術後14日目に退院した.抗リン脂質抗体陽性に加え,血栓症の既往など臨床症状を伴うものが,抗リン脂質抗体症候群と診断され,外科周術期に血栓症発症のリスクが高い患者群とされる.本症例のように抗リン脂質抗体陽性のみでは,周術期の血栓症発症のリスクが高いといえるのか議論のあるところではあるが,この患者は抗リン脂質抗体であるループスアンチコアグラント,β2グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体,抗カルジオリピン抗体の三者が強陽性であり,血栓症発症のリスクは比較的高いものと考え,慎重に抗血栓対策を行った.ITPと抗リン脂質抗体陽性を伴う患者の周術期管理について,文献的考察を加え報告する.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 50 (10), 1132-1135, 2018-10-15

    公益財団法人 日本心臓財団

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