臨床実習指導者の指導意欲と指導内容との関連性

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抄録

<p>【目的】</p><p>これまで我々は臨床実習指導者(指導者)の理想像(吉村,2018)、指導者が感じる困惑(二宮,2019)などをテーマに指導者に関わる客観的な分析を試みてきた.それらの研究の過程で、指導者自身の教育に関する自己研鑽の必要性、指導者が考える実習の問題点などを報告してきた.そして、それらの結果から指導者の特性である臨床指導に対する意欲(以下、指導意欲)は多くの実習指導内容と深く関連していることが推測された.先行研究においても指導意欲に関する報告はあるが、統計学的な検証は十分になされていなかった.したがって本研究は、指導者の指導意欲が実習に及ぼす影響を知るために指導内容との関連性を統計学的に検討することを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>平成25年8月から平成26年3月までの8ヵ月間に九州地方の42施設の理学療法士より収集したアンケート結果を使用した.回収部数は790名,有効回答数は689名(87.2%)であった.そのうち解析対象となる変数の欠測値を除外した416名(臨床経験年数8.21±6.0年、指導経験年数6.51±7.6)の回答を使用とした.実習指導に対する興味に関する設問から、興味あり(以下、Yes群)と興味なし(以下、No群)に分類し指導意欲の有無とした。また、参考としている指導方法、取り組む姿勢、教員との連携、学生の情報収集、実習目標に関する11項目の回答(カテゴリカル変数)との関連性をFisherの直接法を用いて解析した.さらに、オッズ比の参照カテゴリ(Reference)は、No群が各設問にYesと回答する事象とした.</p><p>【結果】</p><p>Yes群は300名、No群は116名であった.結果は、[p値、オッズ比、オッズ比の95%信頼区間]を示す.指導には現場で学んだことを参考にする[p= 0.010, 2.35, 1.15-4.74].指導の参考として研修会を受講した[p < .001, 3.17, 1.77-5.97].指導にやりがいを感じる[p < .001, 19.0, 9.43-40.32].学生指導はセラピストとしての成長のために必要である[p < .001, 16.86, 4.73-91.73].指導方法について学びたい[p < .001, 7.51, 2.26-26.97]. 他の5項目の95%信頼区間には、1が含まれていた.</p><p>【考察】</p><p>Natureに有意差検定批判が掲載され(Valentin,2019)、国内報道でも取り上げられた.そこで、本研究では、有意水準を設けずに分割表と層別解析による統計解析結果をもとに考察した.結果より,指導意欲のある指導者は、就職後に現場や研修会で学んだことを指導に活用しており、さらにオッズ比の高い項目から学生指導を自己研鑽と考えている指導者の割合が多いことが示唆された.また、p値の高かった項目について経験年数で層別解析していくことで、学生の事前情報収集が必要か[p=0.1858, 1.77, 0.72-4.17]という設問では、経験年数の多い群では高いオッズ比が認められ[p=0.06769, 3.75, 0.80-19.9]、経験年数による事前準備に対する考え方の相違が推測された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,調査対象施設に対して,口頭および文書にて研究主旨を十分説明し,同意を得て調査を行った.なお本調査は共同研究者所属の倫理委員会承認を得て行った(承認番号:2000).本研究において開示すべき利益相反はない.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390002184850137344
  • NII論文ID
    130007760800
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_64
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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