ホスファチジルセリンの移層と死細胞の認識機構

  • 瀬川 勝盛
    大阪大学免疫学フロンティア研究センター免疫・生化学部門

書誌事項

タイトル別名
  • Mechanisms for phosphatidylserine translocation and recognition of dead cells
  • ホスファチジルセリン ノ イソウ ト シ サイボウ ノ ニンシキ キコウ

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抄録

ホスファチジルセリン(PtdSer)は細胞膜を構成する主要なリン脂質であり,脂質二重層の内葉に限局し,細胞外に面する外葉には存在しない.すなわち,非対称に分布する.PtdSerの非対称的な分布は,真核細胞で広く保存される根幹的な構造様式である.一方,個体の恒常性を維持するために,哺乳類細胞はさまざまな局面でこの非対称性を崩壊させる.たとえば,アポトーシス細胞はPtdSerを“eat me”シグナルとして細胞表面へ露出し,マクロファージに認識・貪食される.活性化した血小板は,露出したPtdSerを酵素反応の“足場”として機能させることで,血液凝固反応を促進させる.いずれも,内葉に限局するPtdSerを速やかに細胞表面に露出させることがシグナル伝達の引き金となる.本稿では,PtdSerを細胞膜の外葉から内葉に移層させる膜タンパク質,フリッパーゼの機能と活性制御機構を中心に,PtdSerの非対称性の維持と崩壊の分子メカニズムとマクロファージによるアポトーシス細胞の認識機構について概説する.

収録刊行物

  • 生化学

    生化学 91 (6), 743-752, 2019-12-25

    公益社団法人日本生化学会

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