ハンノキとシラカンバの葉に潜るハモグリガ科の新種
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- 小林 茂樹
- Entomological laboratory, Graduate School of Life and Environmental Sciences, Osaka Prefecture University
書誌事項
- タイトル別名
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- A new species of the genus <i>Lyonetia</i> (Lepidoptera: Lyonetiidae) associated with <i>Alnus japonica</i> and <i>Betula platyphylla</i> from Japan
説明
<p>ハンノキの葉に潜るハモグリガは奥(2003)で初めて学名未決定種Lyonetia sp.として報告され,その後2008年に寄主植物がハンノキと判明したのでハンノキハモグリガ(仮称・学名未決定)の名が付けられた(奥,2008).本種の分類については,同定依頼を受けた黒子 浩博士(故人)により公表される予定であった.著者の一人,小松は2017年6月から8月に北海道七飯町鳴川においてハンノキ(カバノキ科)に潜るハモグリガ科幼虫を採集した.羽化した成虫の交尾器の形態は黒子博士が残された交尾器スライドとも一致し,近縁種と形態を精査した結果,新種と認めた. ハンノキハモグリガ Lyonetia (Lyonetiola) kurokoi Kobayashi, sp. nov. 開張 9.4?13.5 mm.前翅は白色で後縁の2本の暗灰色の斜条は細く,前縁の2本の斜条と中央で合流して先端部分に向かう.前縁基部から走る暗灰色の帯は,時に前縁斜条と一体化した大きな前縁の帯にみえることがある.また,そのような個体では後縁の斜条が短く不明瞭になる.岩手県では,前翅が白色の夏型,9月下旬以降に暗灰色の秋型が出現する(奥,2008).♂交尾器のバルバは先端がとがり,ファルスはクリハモグリガに比べ,やや長く(1.2倍),より湾曲する.♀交尾器の交尾のうはシグナを欠きドゥクツス・ブルサエとの接合部分付近の硬化部はかぎ爪状の突起をもつ.幼虫は初め葉の背軸側に潜り,やがて葉身全体に拡がる大きな斑状潜孔を造る.ひとつの潜孔に複数の幼虫が潜り,多い場合,7,8個体の幼虫が確認できた.マユはハンモック状で潜孔の外に造る.シラカンバ上での生態は不明. シラカンバから飼育された長野県産標本は,開張12.2?13.5 mmと大きく,顔面は白色ではなく薄茶色で前翅の斜条は不明瞭で黄茶色になるが,♀交尾器の特徴から本種と同定した.♂は未知であるが黒子博士が解剖したこの標本群と思われる♂交尾器スライドを検鏡したところ,本種と特徴が一致した.また,網走産個体(寄主不明)も同様に大きく茶色に近い斜条をもつが,後縁斜条は明瞭で中央で合流して翅頂に向かう.Lyonetiola亜属は,前翅の1.5倍の長さの触角をもつが,本種の触角の長さは1.2倍程度である.</p>
収録刊行物
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- 蝶と蛾
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蝶と蛾 70 (3-4), 99-108, 2019-11-30
日本鱗翅学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390002184854764672
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- NII論文ID
- 130007769823
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- ISSN
- 18808077
- 00240974
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- 本文言語コード
- en
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可