結びつきの場としての軍隊

書誌事項

タイトル別名
  • The British army and the personal networks of its officers in the later eighteenth century
  • 結びつきの場としての軍隊 : 一八世紀イギリス陸軍将校の人的なつながりに注目して
  • ムスビツキ ノ バ ト シテ ノ グンタイ : イチハチセイキ イギリス リクグン ショウコウ ノ ジンテキ ナ ツナガリ ニ チュウモク シテ
  • 一八世紀イギリス陸軍将校の人的なつながりに注目して

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抄録

本論文の目的は、一七七〇、八〇年代にイギリス陸軍の将校として主に北米で勤務した三人(ジョン・ピーブルズ、ジョン・エニス、トマス・ヒューズ)の従軍記録をもとに、彼らが軍隊勤務を通じて形成していた人的なつながり(その広がりと具体的なありよう)を分析することにある。彼らが取り結んだ人間関係を、軍隊内部と対市民社会の二つの領域に分けて検討すると、以下のことが明らかとなる。<br> まず軍隊内部においては、戦時・平時の諸任務を共同で遂行することを通じて、将校の間に強固な結びつきが見られた。その範囲は、当時の活発な人事異動や流動的な部隊配置を反映して、個々の中/連隊の枠をはるかに超えるものであった。勤務時間外における会食やさまざまな余暇活動(そこには将校の家族も参加していた)もまた、彼らの紐帯を維持・強化するのに寄与していた。さらに、下士官・兵士との間でも、密接な関係が結ばれる事例がしばしば見られた(将校付きの従者との関係など)。一方、将校の人的つながりは市民社会にも及んでいた。軍隊と市民社会の間には無数の接点(軍の駐屯業務や地域の儀礼的行事、各種の社交イベントなど)が存在し、そうした場での頻繁な接触をきっかけに、多くの将校(とその家族)が地域住民と長期にわたる交友関係を築いていった。<br> このように、陸軍将校の人的なつながりは、①所属部隊に限定されない、②市民社会にまたがる、③兵士層にも及ぶ、④帯同する家族を含む、の各点において、これまでの研究が想定することのなかった広がりを持つものであった。一八世紀の陸軍は、軍に所属する/軍を取り巻く多様な人々が、互いに知り合い、結びつく場として機能していたといえる。そして、そこで生み出される人的なネットワークこそは、軍隊内部の秩序、および軍隊‐市民社会の関係を支える最重要の柱の一つであった。

収録刊行物

  • 史学雑誌

    史学雑誌 127 (12), 39-64, 2018

    公益財団法人 史学会

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