女子体育大学生へのスポーツ理学療法
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- 板倉 尚子
- 日本女子体育大学 健康管理センター
Abstract
<p> 1928年アムステルダムオリンピックに人見絹枝選手が日本女子選手として初出場し、800mで2位(記録2分17秒6)となり日本人女性初のメダリストになった。現在の800m世界記録はヤルミラ・クラトフビロバ選手(チェコスロバキア/1983年7月26日)の1分53秒28であり55年間で約24秒短縮されている。人見選手もヤルミラ選手も大柄な体格で男性的な容貌だったと記録されており、これまで国際的に活躍する女性選手は一般女性に比較しスポーツに秀でた身体的特徴を有する一部の選手だったのではとおもわれる。近年は多くの女性がスポーツ活動に参加する機会が増え、国際大会においても女性アスリートの活躍は著しく好成績を得ている。競技レベルでスポーツ活動に取り組む女性アスリートを支援するには、女性の心身の特徴をふまえ、多職種の専門家がチームを編成し女性の心身をサポートする必要があるが、人見選手のメダル獲得から91年が過ぎてなお、その環境は十分とはいえない。</p><p> 男性はトレーニングを行うと血中テストステロンが増加し筋蛋白合成を高めて筋力が増加する。一方で女性の身体は男性に比べてトレーニングによる筋量増加の変化が起きにくい。その背景には女性のトレーニングによる血中テストステロンの増加は低く、女性のテストステロンは主に副腎アンドロゲンであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)から再合成されると報告されているものの、トレーニングによる筋量増加は男性ほどの変化がみられないのが特徴として考えられている。コンタクトスポーツ、特にラグビーなどのコリジョンスポーツでは強い筋力発揮が必要であるがトレーニングメニューに難渋する選手がある。</p><p> 骨格で最も成人男女の差があらわれるのは骨盤であり、一般的に女性骨盤は男性骨盤に比べて横径が大きく、また大腿骨の形状は男性に比べ女性が小さいといわれており、また大腿頸部の前捻角も男女差があるといわれている。このような女性の骨格の特徴は下行性運動連鎖に影響をあたえやすい。女性の骨格は男性に比べて股関節の位置が重心線に対して外方に位置するため、Closed kinetic chain(CKC:閉鎖運動連鎖系)において中枢から末梢へと生じる下行性運動連鎖に影響が生じやすい。また、女性の身体は関節柔軟性が高く、足部が柔らかいアスリートでは荷重により足部アーチの形状が崩れ末梢から中枢へと上行性運動連鎖の破綻が生じやすい。女性アスリートへの動的アライメント対策はスポーツ外傷・障害の予防となる。本シンポジウムでは女子体育大学健康管理センターでの取り組みとともに、女性アスリートのスポーツ外傷・障害への理学療法について紹介する。</p>
Journal
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 38 (0), 0011-, 2020
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390002184860379392
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- NII Article ID
- 130007779446
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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