神経毒のその場計測を目指した簡便な電気化学検出法

  • 嶋田 裕史
    熊本大学大学院先端科学研究部物質材料科学部門生体関連材料分野 長崎県警察本部刑事部科学捜査研究所
  • 井原 敏博
    熊本大学大学院先端科学研究部物質材料科学部門生体関連材料分野

書誌事項

タイトル別名
  • Simple Electrochemical Method for the On-site Detection of Neurotoxins
  • シンケイ ドク ノ ソノ バ ケイソク オ メザシタ カンベン ナ デンキ カガク ケンシュツホウ

この論文をさがす

抄録

<p>カチオン性チオール/ジスルフィド分子の金電極上における電子移動促進効果を見いだし,新たな原理に基づく分子センサーを開発した.神経毒の一種であるネライストキシン(4-N,N-dimethylamino-1,2-dithiolane, NRT)は,分子内にジスルフィド結合と3級アミンを有し,Au-S共有結合を介して金電極表面に結合し自己組織化単分子膜を形成する.これにより電極表面は正に帯電し,アニオン性のフェリシアン化物イオンと金電極との間の電子移動が促進されることがわかった.この電子移動促進効果は支持電解質の塩化カリウム(KCl)濃度を低くすると一層顕著となり,1 mmol L−1 KClの条件下ではNRTの有無によりほぼ0/1のコントラストが得られた.この現象に基づいて新規NRTセンサーを構築し,血清中から十分な感度で定量的に検出することに成功した.同様の電子移動促進効果は,NRTと類似の構造を有するチオコリンについても認められ,コリンエステラーゼ阻害作用を有する神経毒である有機リン剤及びカルバメート剤の検出,並びに血中コリンエステラーゼ活性評価法(中毒の判定法)に応用した.</p>

収録刊行物

  • 分析化学

    分析化学 68 (12), 911-923, 2019-12-05

    公益社団法人 日本分析化学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ