信頼とリスクのマネジメント

書誌事項

タイトル別名
  • The Management of Trust and Risk
  • シンライ ト リスク ノ マネジメント

この論文をさがす

抄録

2011 年の東日本大震災以後、日本版「信頼の危機」が到来しているとの指摘がある。「リスクと信頼」という問題領域はその意味でも重要性を増してきているが、本稿では、社会システム理論に主として依拠しながら、現代のリスクと信頼とのいささか捻れた関係と、それゆえにもたらされる新たな問題を浮き彫りにしていきたい。まず、(1)ルーマンの「システム信頼」の概念をあらためて振り返り、(2)信頼の危機と呼ばれる状況にいたるプロセスを「リスクの社会的増幅フレームワーク(SARF)」の議論を援用しつつ素描する。その後、このような「信頼性喪失」が当事者によってまさに問題として把握されることによって、(3)「信頼(性)」が、たとえば評判リスクやオペレーショナル・リスクといったかたちで、各種の組織において新しいリスク管理対象となっている現状と、このことが翻って、別種の問題の源泉になりうることを指摘しつつ、(4)最後に、リスクと信頼との関係を問うさいの新しい視角、すなわち、健康や安全性や環境にもたらされる危害の管理という本来の意味でのリスク管理(一次的リスクの管理)と、(信頼性喪失という)二次的リスク管理との関係をいかに管理していくのかというメタ的な視点が、アカデミックな議論のみならずリスク規制の実践においても今後必要になるゆえんについて、論じる。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ