少年司法制度研究に対する漂流理論の意義

書誌事項

タイトル別名
  • The Implications of Drift Theory for the Sociological Study of Juvenile Justice
  • 少年司法制度研究に対する漂流理論の意義 : D. Matzaによる「柔らかい決定論」の再検討を通して
  • ショウネン シホウ セイド ケンキュウ ニ タイスル ヒョウリュウ リロン ノ イギ : D. Matza ニ ヨル 「 ヤワラカイ ケッテイロン 」 ノ サイケントウ オ トオシテ
  • Reconsidering the Concept of David Matza’s Soft Determinism
  • D. Matzaによる「柔らかい決定論」の再検討を通して

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抄録

本稿の目的は、少年司法制度の社会学研究に対し、D. Matzaの漂流理論がいかなる意義をもつのかについて考察することである。Matzaの漂流理論は、実証主義の非行理論に対する批判として展開された。従来、実証主義の非行理論は「非行とは個人の統制能力を超えた諸力の産物である」という見解を支持してきた。それに対してMatzaは、非行少年は合法と非合法のあいだを漂流しているものと考え、そのような非行少年像を提示するに際し、人間の自由な意思や選択をも考慮した「柔らかい決定論」の方針に依拠したのである。<br> 社会学では一般に、非行少年の実態的な心理や行動メカニズムに準拠して、漂流という現象が解釈されてきた。その際、「柔らかい決定論」は、自由意思と因果律のあいだで不安定に浮動している少年を描くための方針と見なされている。だが、そもそもMatzaの問題関心は「非行と法制度の相互関係」を解明することに置かれていたはずだ。この点に注目すると、漂流とは法制度との関係において促進される現象であることが見えてくる。さらに「柔らかい決定論」を、漂流の促進条件を記述するための反省的方針として捉えることができる。本稿は、以上の立場から漂流理論を捉えなおすことを通じて、日本の少年司法制度研究、とくに経験的な少年審判研究を展開するための足掛かりとなることを目指す。

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