一人称的権威と西田の実践哲学

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  • The first-person authority and Nishida’s practical philosophy
  • The fist-person authority and Nishida's practical philosophy

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抄録

本稿では、次の三つの問題をとりあげる。 1) 一人称的視点をめぐるとくにその認識論的な諸問題 2) 西田の実践理性概念、とりわけその歴史的現実世界における意義 3) 西田におけるこの二つの問題の関連性 まず、はじめに、現代分析哲学において「一人称的権威」と呼ばれる問題を要約し、 この認識論的問題に関するいわゆる「合理性命題」を検討する。とくにその一例 として、一人称的権威に関するタイラー・バージの論証を検討し、その理論の基 礎にある実践理性的な前提条件を明確にする。次に、西田の中期の著作に基づき、 いわゆる「推論式的一般者」の議論などにみられる西田の「推論」概念をとりあ げる。西田の「推論式的一般者」の概念には、いくつかの特徴があるが、本稿で は、とくにその実践理性的な側面に焦点をあてて検討する。西田は、しばしば、「推論」という現象の複雑な多義性を問題としている。推論には、その論理的必然性 という側面と、歴史的現実における実践理性という側面とがあり、西田は前者を 推論の「構成的」側面、後者をその「直覚的」側面と形容している。西田の推論 についての基本的な考えは、とくにこの第二の側面(「直覚的」側面)について の考察において、現代分析哲学における「合理性」命題と異なっている。本稿で は、さらに、西田の「推論式的一般者」についての一連の思惟が、実は彼の「叡 智的自己」及び「叡智的世界」の概念と密接に関連していることをあわせて明ら かにする。

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