新興国におけるフランチャイズ・チェーンの店舗網の地域的拡大とその特徴

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  • Regional expansion and characteristics of franchise chain store networks in emerging country

抄録

<p>報告者らは現在,新興国市場の1つである中国を事例として小売チェーンにおけるフランチャイズ方式の採否とチェーンの店舗網の地域的拡大について研究を行っている。</p><p></p><p> はじめに理論的研究をまとめると,小売チェーンにおけるフランチャイズ方式の採用メカニズムについては,①資源ベース理論,と②エージェンシー理論,という2つの理論による説明が有力とされてきた(川端2010)。これに対して,近年の研究では,小売チェーンが資金や人材の確保がしやすい大企業になった後もフランチャイズ方式を維持する場合等,従来の理論だけでは説明できない事例もみられるようになっている。その中で,新興国市場のように市場の異質性・変動性が高い市場においては,リスクの分散という観点からフランチャイズ方式を採用する企業もみられる点が指摘されるようになっている(白石2016)。</p><p></p><p>これらの研究動向を踏まえ,本発表では,中国においてインターネット通販の影響を受けにくく,実店舗を中心とした店舗展開が現在でも顕著にみられると予想される靴小売チェーン大手5社を事例として取り上げ,フランチャイズ方式導入の有無の違いによるチェーンの店舗網の地域的拡大のパターンの差異や特徴について検討を行う。</p><p></p><p> 研究手法としては,各社の店舗データや経営戦略に関する公表された資料・データの分析に加えて,フランチャイズ方式による店舗展開が最も顕著にみられる意爾康社へのインタビュー調査を行った。</p><p></p><p> 調査結果をまとめると,大手5社のうち,フランチャイズ店舗が店舗のほとんどを占めている企業として業界2位の意爾康(5,478店),紅蜻蜓(3,670店)の2社が,逆に直営店を中心に店舗展開を行っている企業として最大手の百麗(6,555店),达芙妮(2,956店)の2社が,直営とフランチャイズの両方の方式で店舗展開している企業として奥康(3,310店)がある(2019年4月時点)。店舗の全国的分布をみるとフランチャイズ方式を採るチェーンでは内陸部や地方都市にも比較的多くの店舗が出店されている(図1,表1)。これらの内陸部や地方都市では,大都市部の市場に比べて異質性や変動性が大きく,リスク分散の観点から,特に商品のブランド力に乏しいチェーンではフランチャイズ方式を採用するメリットが大きい反面,利益配分の難しさという課題があることが分かった。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390002184889176832
  • NII論文ID
    130007822280
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_55
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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