-
- 吉井 健
- 大妻女子大学家政学部被服学科
書誌事項
- タイトル別名
-
- A study of multichannel shopper’s behavior for apparel products in the physical store
- -The empirical investigation about a correlation between the satisfaction with information and the satisfaction with reduction of perceived risk in the physical store-
- ―リアル店舗内での情報への満足感と知覚リスク低減効果への満足感との相関性に関する実証研究―
抄録
<p>1. 目的</p><p> 近年のインターネット,スマートフォンの発展により,消費者自身の情報探索行動が多様化している.消費者はリアル店舗とネット店舗を含むマルチチャネル環境を垣根もなく往来し,購買意思決定を行えるようになってきた.このようなマルチチャネルショッパーの行動を背景として,アパレル業界においても,自社のリアル店舗とネット店舗等のあらゆるチャネルを連携させたオムニチャネル戦略を推進する小売事業者が増えている.</p><p> このオムニチャネルの背景となる多様な消費者行動の代表格としては,ショールーミングやリバース・ショールーミングが挙げられている.ショールーミングとは,消費者(ショールーマー)がリアル店舗をショールーム代わりにして商品と価格を確認した後で,リアル店舗内もしくはリアル店舗外にて,ネット店舗で購買する行動である.一方,リバース・ショールーミングとは,消費者(リバース・ショールーマー)がリアル店舗への訪問前ならびに店舗内においても外部サイトの情報探索を行うものの,ネット店舗での購買を行わずに,リアル店舗で購買するという行為である.このように,リアル店舗とネット店舗を往来するマルチチャネルショッパーにおいて,そのチャネルの使い分けの背景には,購買に際して認識する知覚リスクを低減する目的があると言われている.</p><p> リアル店舗とネット店舗間を往来するショールーマーとリバース・ショールーマーに関連した消費者行動研究は進んできているものの,アパレル商品を購買する,それらのマルチチャネルショッパーの情報探索と購買プロセスに関しては,研究課題が残されている.特に,それらの消費者が,訪問したリアル店舗内でいかなる情報を収集して満足するのか,そして,いかに知覚リスクの低減を図って満足しているのか,さらには,その2つの要素がいかなる関係性を持つのかについては研究課題になっている.</p><p> そこで,本稿では,リアル店舗とネット店舗間を往来するマルチチャネルショッパー,すなわちショールーマーとリバース・ショールーマーにおける,リアル店舗内で得る情報内容への満足感と知覚リスクを低減することによる満足感との関係性の解明を研究の目的とする.このリアル店舗内で得る情報内容については,スマートフォン等の携帯端末経由で入手するサイト情報と売場で得られる情報に焦点を当てる.</p><p></p><p>2. 方法</p><p> 本実証研究では,設定した仮説に基づき,インターネット経由にて,アパレル商品の購買をした消費者を対象に,アンケート調査にあたった.全国に居住する20 代から50 代の女性に向けて,2018 年12 月に調査を実施した.分析対象とする消費者は,リアル店舗とネット店舗を往来する,ショールーマーとリバース・ショールーマーの中から,購買タイプによってさらに細分類した,合計628 名の4 タイプの消費者とし(①従来型ショールーマー,②チャネルスイッチ・ショールーマー,③チャネルスイッチ・リバース・ショールーマー,④ウェブルーマー),各々の分析結果を比較することで,検証を進めた.尚,分析手法としては,共分散構造分析を採用した.</p><p></p><p>3. 結果・考察</p><p> 本実証分析の結果,以下の点を明らかにすることが出来た.</p> <p> (1)アパレル商品を購買する4タイプの消費者グループにおける,因子「サイト</p> <p> 情報への満足感」,因子「売場情報コミュニケーションへの満足感」,そし</p> <p> て因子「知覚リスク低減効果への満足感」の3つの因子間相関では,統計的</p> <p> に有意な正の相関が認められた.これにより,リアル店舗内で得られる,様</p> <p> 々なサイト情報や店舗従業員からのサービス・情報,そして売場のディスプ</p> <p> レイ等の情報を連携させていくことで満足感を高め,それによって,知覚リ</p> <p> スク低減を図って満足をする傾向を見出した.</p> <p> (2)購買に際して認識する知覚リスクの内容の中でも,商品の素材・品質・性</p> <p> 能等の商品パフォーマンス上の知覚リスクを低減することの満足度が,4タ</p><p> イプの消費者グループにおいて,共通して比較的高い傾向にあることが分か</p> <p> った.</p> <p> (3)4タイプの消費者グループにおいて,リアル店舗内で得られる情報への満足</p> <p> 感と知覚リスク低減効果への満足感には,それぞれ,異なる傾向が見られ</p> <p> た.</p> <p></p><p> 本実証分析の結果より,リアル店舗とネット店舗を往来するマルチチャネルショッパーに向けた,アパレル小売事業者のマーケティング施策案や今後の研究課題点を提示した.</p>
収録刊行物
-
- International Journal of Human Culture Studies
-
International Journal of Human Culture Studies 2020 (30), 202-232, 2020-01-01
大妻女子大学人間生活文化研究所
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390002184893336704
-
- NII論文ID
- 130007829992
-
- ISSN
- 21871930
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
- KAKEN
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可