自動車運転再開への新たな指標に関する注意機能評価支援システム

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  • Evaluation support system for attention function concerning new indicators of driving resumption program

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抄録

交通事故や脳血管障害などが原因で脳に大きな損傷を負うと、高次脳機能障害を呈することが知られている。高次脳機能障害の発症率は10万人に50〜70人と推定される。この中の発症数で8〜9割が自動車運転再開を検討する必要があると予想され、高次脳機能障害患者に対して運転再開判断のための検査への需要が高まっている。自動車運転には変化する状況に対応するための注意機能が必要とされている。そのため、高次脳機能障害のなかでも発症率が高く、自動車運転に必要な注意機能が低下した症状がある注意障害者を実験対象とした。本研究は注意障害者の探索の特徴を明らかにすることで、自動車運転適否判断への新たな指標になるような注意機能の評価を行うことを目的とする。提案手法として、従来では計測できなかった生体データを定量的に取得することで、一度の検査で同時に注意機能に関する指標の多数計測を可能にした評価支援システムを開発した。注意障害の検査で広く使用されているTrail Making Testに注目し、これをスマートデバイスで再現した。さらに検査取り組み中に、視線計測センサーを用いて探索の仕方を抽出した。本論文では健常な20代3人、80代3人および注意障害者7人を対象として提案する評価支援システムを適用させた。健常者群の中では加齢による探索の変化はみられなかったが、注意障害者は、目標発見後いったん手元に視線が戻り、手元とともに視線が移動する例が確認できた。これは注意の配分性と持続性が弱く、自身の注意を補うための代償行為として行っていることを明らかにした。この代償行為が実際に自動車運転中に起きてしまった場合、注意を向けなければならない方向に正しく向けられない可能性がある。これは運転において重要な要素であると考察し、自動車運転適否の新たな指標になると結論づけた。

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