• 吉田 尚弘
    自治医科大学附属さいたま医療センター耳鼻咽喉科

書誌事項

タイトル別名
  • 第120回日本耳鼻咽喉科学会総会学術講演 難治性中耳炎の診断と治療
  • ダイ120カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ ガクジュツ コウエン ナンチセイ チュウジエン ノ シンダン ト チリョウ

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説明

<p> 抗菌薬投与, 鼓膜換気チューブ留置, 外科的治療に抵抗性のある難治性中耳炎がある. 小児では, 難治性急性中耳炎, 滲出性中耳炎の遷延化による病的鼓膜, 鼓膜アテレクターシス, 癒着性中耳炎が多い. 一方, 成人では, 薬剤耐性起炎菌による中耳炎, 結核性中耳炎, コレステリン肉芽腫, 悪性外耳道炎 (頭蓋底骨髄炎), 好酸球性中耳炎, ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody) 関連血管炎性中耳炎などがあり, 鑑別が必要である.</p><p></p><p> 中でも, 気管支喘息, 好酸球性副鼻腔炎などの好酸球性上気道疾患の増加に伴って, 好酸球性中耳炎も増加している. 好酸球性中耳炎は, 成人発症の気管支喘息を伴い好酸球の浸潤のある粘稠な中耳貯留液を特徴とし, 病勢, 症状にあわせた副腎皮質ステロイドを中心とした治療が必要となる.</p><p></p><p> また, 近年 ANCA 関連血管炎が関与する中耳炎について, その臨床像, 臨床経過, 治療効果の共通性から ANCA 関連血管炎性中耳炎 (otitis media with ANCA-associated vasculitis: OMAAV) が新たに提唱されている. 臨床経過として, 抗菌薬, 鼓膜換気チューブ留置の効果がなく, 1~2カ月といった比較的急激に進行する骨導閾値の上昇を認め, 症例によっては顔面神経麻痺, 肥厚性硬膜炎などを合併することが特徴的である. この新たな疾患概念は, 従来原因不明とされた難治性中耳炎の多くの病態と臨床像を説明し得る. 臨床経過や鼓膜の血管怒張, さらには ANCA 抗体価陽性の症例であれば OMAAV の診断は比較的容易であるが, 副腎皮質ステロイド投与により ANCA 抗体価は陰性化し, 診断に苦慮することも少なくない. 成人の難治性中耳炎では, 副腎皮質ステロイドを投与する前に ANCA 抗体価を測定することが大切である. 治療は, 副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬併用による寛解導入治療を行う.</p>

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