東アジアにおける輸出構造の高度化――中所得国の罠へのインプリケーション――

  • 熊谷 聡
    アジア経済研究所開発研究センター経済地理研究グループ長
  • 黒岩 郁雄
    新潟県立大学国際経済学部教授

書誌事項

タイトル別名
  • Export Upgrading in East Asia: Implications for the Middle-income Trap
  • ヒガシアジア ニ オケル ユシュツ コウゾウ ノ コウドカ : チュウ ショトクコク ノ ワナ エ ノ インプリケーション

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抄録

<p>1人当たり所得の水準が同じ時点でみると,韓国,中国など北東アジア諸国と比較して,マレーシア,タイなど東南アジア諸国の経済成長率は低い。その原因として,輸出や産業構造の高度化の差異が考えられる。本論文前半では,各国の貿易高度化指標を作成し,素材・部品・消費財といった各生産ステージ内の高度化と各ステージ間の輸出シェアの変化による高度化に分解して分析した。両地域とも1990年代以降一貫して生産ステージ内の高度化が進んでいるが,東南アジア諸国においては,2000年代以降,生産ステージ間では退化がみられた。後半では,アジア国際産業連関表を技術水準別財区分に変換したうえで,付加価値貿易分析を行った。輸出比率を比較すると,ハイテク財の輸出比率と付加価値ベースの輸出比率の間に大きな乖離があることが明らかになった。また,輸出のうち海外に漏出する付加価値の割合を示すVSシェアを見ると,東南アジア諸国のVSシェアは高く,東南アジア諸国は北東アジア諸国が供給する中間財に強く依存する一方で,下流から上流産業に向けて輸出構造が高度化する雁行型の産業発展は明確にはみられない。</p>

収録刊行物

  • アジア経済

    アジア経済 61 (2), 2-35, 2020-06-15

    独立行政法人 日本貿易振興機構アジア経済研究所

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