日本人とキリスト教:旧約聖書父祖物語の場合

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タイトル別名
  • The Japanese and Christianity: In the Case of Patriarchal Stories in the Old Testament
  • ニホンジン ト キリストキョウ : キュウヤク セイショ フソ モノガタリ ノ バアイ

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説明

<br>  日本に外来の宗教である仏教を、庶民にとってなじみのある宗教として定着させた上で、弘法大師(空海)が果たした功績は大きい。彼は密教、そして日本土着の宗教である山岳宗教を通して、日本人の宗教意識であるアニミズム・シャーマニズムに仏教を適応させた。 <br>  今回テーマとする旧約聖書の信仰であるヤハウェ信仰は、砂漠でのモーセへの神ヤハウェの啓示を起源としていて、パレスチナ(カナン)の土地にあっては外来の宗教だった。この地方にもともと存在していた(先住民)カナン民族に、ヤハウェ信仰を定着させるための努力が旧約聖書、創世記の父祖物語の中に見ることができる。パレスチナには古代イスラエル以前からの古くからの諸聖所が存在し、そこには聖所の由来となる聖所伝説があり、定礎をした人物が言い伝えられていた。創世記では、この聖所伝説を採用し、彼らがヤハウェ信仰の信仰者であったと主張することによって、先住民であるカナン人へのヤハウェ信仰の浸透と定着を図る。このようにして、ヤハウェ信仰を異民族に適応させようとする努力が創世記の記述にはある。新約聖書に描かれる初代教会の発展の歴史のみならず、旧約聖書の初めにおけるヤハウェ信仰の定着のあり方も適応主義だった。 <br>  しかしその上で、もともと神のような神的人物として崇められていたその神性をそぎ落し、自分たちと同じような弱さを持ったひとりの人間として描くことに努めるとともに、ヤハウェの存在は場所、聖所を超えた存在、どこにあってもともにあり、決して見捨てない神であることを主張する。それは土着の宗教意識であるアニミズム・シャーマニズムを評価し、受け入れつつも、それを超えたヤハウェ信仰の独自性の主張だった。

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