村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』について ー心理学的観点からー

書誌事項

タイトル別名
  • On 'After the quake' by Haruki Murakami : From a psychological point of view
  • ムラカミ ハルキ カミ ノ コドモ タチ ワ ミ ナ オドル ニ ツイテ シンリガクテキ カンテン カラ

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説明

本稿は、村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』(2000)のうち、最初と最後の短編に心理学的観点から解釈を加え、そこに現代の日本人にとって課題となっていると考えられる問題とその解決への示唆が描かれていることを明らかにすることを目的とした。まず最初の短編における主人公の結婚と浦島説話の初期の話形に語られる浦島と亀比売(かめひめ)との結婚が類比的に考えられることを示した。そして、河合隼雄の昔話研究に依りながら、亀比売が太母、あるいはユングがその錬金術研究でとりあげた第一質料=混沌塊と意味的に重なることを論じた。さらに混沌塊が現代に無縁でないことを示すため、混沌塊の侵入により破壊された天婦を描いていると考えられる1960年代の小島信夫著『抱擁家族』を論じた。次に村上の作品に戻り、最後の短編において主人公が、太母の布置を越えて自我を生かせるようになり、女性との結婚と家族の創造へと向かう姿に考察を加えた。ここには深層の布置の変化が推測できるが、その内容はこの作品からだけでは読みとれないことを述べた。

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